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2010-02-18 07:41
党首討論は喧嘩苦手の谷垣の勝ち
杉浦正章
政治評論家
自民党総裁・谷垣禎一は「残る道は退陣だと、はっきり言えばよかった」と、党首討論で言わなくて、後から記者団に言ったが、それでは「出し遅れの証文」だ。おおむねの新聞論調は「どっちも、どっち」と、引き分けが多い。しかし、筆者は首相・鳩山由紀夫と谷垣の党首討論は、6対4で谷垣の勝ちとみる。なぜなら、今回の党首討論の最重要ポイントは、“平成の脱税王”の姿を浮き彫りに出来たかどうかだからだ。プロが新味がないと見るのは当然だが、5カ月ぶりにやっと応じた討論への国民の関心は高い。茶の間に向けて点数を稼げたか、ということから見れば、自らの献金疑惑に平身低頭して守りに徹した首相を見て、「可哀想だ。支持率を高めてあげたい」という国民は皆無だろう。紛れもなく支持率降下作用をもたらすだろう。
確かに、谷垣は人柄を反映してか、鋭さに欠ける質問を続けた。鳩山が企業団体献金の廃止を提唱したのに、回答はなく、鳩山から「返事がなくて残念」と突っ込まれる始末だ。ここは、ツートップの政治資金疑惑に加えて、日教組からの違法献金など、ひしめく民主党不祥事を指摘して、「現行法も守れないのに、法改正して守れるのか」と切り返し、「説明責任を果たしてから、それを言え」と諫(いさ)めるのが正解だった。前財務相・与謝野馨が暴露した母親への度重なる“無心”問題にしても、鳩山に「全くのねつ造」と言わせたままで、矛を収めてしまった。要するに谷垣は、インテリで喧嘩が苦手なのだ。
新聞論調は、連日の予算委員会論議をフォローしているから、必然的に「新味なし」となるが、この論調は大局を見ていない。いかに政権にダメージを与えられるかの尺度からみれば、天の時は谷垣にあったのだ。と言うのも、国民の徴税に対する不満が毎年うっ積する確定申告の時期と重なったことだ。母親からの膨大な“子ども手当”を、首相なら「知らなかった」で済ませ、発覚して初めて納税するパターンが許されるのか、という問題を白日の下に照らし出したからである。多くの国民は、鳩山の「納税がばかばかしいという気持ちが、国民に起きているのは申し訳ない」という陳謝に、「謝ってすむ話か」と言いたいに違いない。口ぐせの「身を粉にして働く」も「働いていただかなくて結構」だろう。加えて谷垣は、鳩山の幹事長・小沢一郎離れを裏付ける発言も引き出した。国会への小沢招致要求に対して「私からの進言は十分あろうかと思う」と、前向き発言を取り付けた。鳩山は、自分の疑惑で精一杯となり、小沢までかばいきれない構図が鮮明になってきた。小鳩分断に成功すれば、第一段階としての「小沢辞任」達成が容易になる。
マスコミ論調は、新聞も、テレビも、「政治とカネに集中しすぎた」と批判しているが、自らの報道ぶりを顧みてはどうか。民放テレビなどは、朝から晩まで政治とカネの話ばかりだ。きれい事を言っているときではない。首相と幹事長のツートップの疑惑にけりをつけないかぎり、日本の民主政治は前進しないのだ。問題は党首討論を逃げまくる鳩山の政治姿勢にある。当初の予定通り、毎週でも党首討論をやれば、おのずと内政、外交にも目が行くだろう。それにつけても、初登場した公明党代表・山口那津男の鳩山に対する“秋波”はどうだ。筆者は、ひょっとしたら出来レースではないかと思う。山口が連座制を厳しくした政治資金規正法改正に向けた与野党協議機関を提案、鳩山が喜々として飛びついた構図は、事前の根回しがあった臭いがする。公明党は昔から野党時代はこの手をよく使ったものだ。1人だけいい子になるわけだ。どうも日本の政治を良くしている政党のようには見えない。根底にポリティクス(政治駆け引き)が見え見えだ。
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