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2010-01-27 07:59
小沢一極支配で民主主義が危うい
杉浦 正章
政治評論家
国会論議を聞いていると、自民党など野党から「大政翼賛会」「民主主義の危機」という発言が相次ぐが、鳩山政権で本当に民主主義は危ういのだろうか。筆者は危ういとみる。一番の理由は選挙ですべての免罪符が与えられたとする首相・鳩山由紀夫と幹事長・小沢一郎の思想にある。ナチスの横暴は、ワイマール憲法下でまさに“民主主義的”な手続きによって始まっている。“小沢権力の暴走”がそれと二重写しになるのだ。もっと寒気がするのは400人余の民主党国会議員が「議員としての仮死」状態にあることだ。それどころが言論規制の動きまで見せ始めた。外国人参政権など立法・政策面でも専制的な動きが出ている。危機は芽のうちから指摘しておく必要がある。
先の党大会で演壇に立った小沢の検察批判と闘争宣言は、古くはヒトラー、会場の礼賛・拍手は将軍様・金正日の演説をほうふつとさせた。もはや鳩山・小沢疑獄ともいえる金銭スキャンダルに、骨のある批判は台頭しない。それどころか、連日予算委員会にはヒトラー・ユーゲントのような小沢チルドレンが数十人も出席して、野党質問者をやじり倒そうとする。予算委員長に質問が聞こえないほどだ。善悪の判断を通り越した、小沢礼賛である。まさに自民党総裁・谷垣禎一のいう大政翼賛会的な雰囲気があることは否めない。小沢権力の暴走とこれを押さえるどころか礼賛する鳩山の姿は、「検察権力と戦う」「戦ってください」発言に象徴される。国会、マスコミ挙げての批判があっても鳩山は取り下げていない。検察に対する指揮権行使への危惧が絶えないのは、ツートップのこの政治姿勢にある。加えて歴代法相が全面否定してきた指揮権発動を、ただ一人千葉景子だけが「一般論として指揮権はある」と含みを持たせている。不気味な雰囲気をもつ老婆・千葉は、何をやるか分からないという危惧感が常につきまとう。現に検事総長を民間から起用するという奇想天外の構想がささやかれているのだ。
正義と邪悪の区別がつかなくなっている兆候は「捜査情報の漏洩(ろうえい)問題対策チーム」の発足を見れば火を見るより明らかだ。責任者を務める元検事の参院議員・小川敏夫が、26日の朝日とのインタビュー記事で「内容的に捜査側がしゃべったとしか考えられない記事や、その可能性が高いものを抜き出して、国民に公表する」と“検閲”の方針を表明。小沢が参考人として検察に呼ばれたことが外に漏れること自体についても、「我々は捜査方針の漏洩とみる」と荒唐無稽(むけい)かつ危険な主張をしている。“ヤメ検”(検事退職者)というのはテレビに出てきて検察批判するのもそうだが、どうも度し難い者が多い。電波行政を所管する総務相・原口一博の「関係者」というマスコミの表現がけしからんと言う発言と合わせれば、検察への圧力と同時に言論規制のにおいが濃厚となってくる。
政策面でも危うい。まず陳情の幹事長室への一元化である。陳情とは情報である。これを一手に小沢が握ってしまっている。自民党のように他の議員には渡さない。その情報を握った上で自民党への報復予算を指示する。例えば農業基盤土地改良事業予算の大幅削減である。自民党支持団体への見せしめであり、参院選をにらんだ布石だ。国論を2分する外国人参政権法案の政府提出も、総選挙の際はマニフェストから外したものを独断で決定する。加えて憲法抵触の官僚の答弁禁止など国会改革法案、天皇の政治利用など危険な「兆候」どころではない政権の姿が見えてきている。
その背後には、総選挙圧勝ですべてに免罪符が与えられるという発想である。鳩山も小沢も、疑惑が選挙前からあったのに「勝たせてもらえた」と、圧勝を盾にしている。総選挙における投票行動の本質は自民党批判票にある。NHKの世論調査でも「鳩山への期待」での投票はわずか3%だった。朝日新聞も20日付の「暗い民主主義はいらない」と題する社説で「総選挙での圧倒的な民意の支持をはき違えている」と断じている。選挙に勝てば何でもできるでは、ヒトラーそのものだ。いまに選挙に熱中する小沢がヒトラーのように「大衆の意志は議場の神学論争ではなく、コロシアムの大歓声にある」と言い出さないかと心配である。
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