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2010-01-08 07:38
「予算委取調室」での追及こそ自民再生の鍵
杉浦 正章
政治評論家
政治家発言のご都合主義には慣れているが、「国会をワイドショーにはしたくない」という民主党国対委員長・山岡賢次の発言ほど、身勝手なものは聞いたことがない。徹底したポピュリズムで政治をワイドショー化して、政権を取っておきながら、ぬけぬけとよく言った。公開の予算委員会を低級な民放テレビのワイドショー扱いすること自体が、国会を侮辱する問題発言だ。しかし確実に予算委は首相・鳩山由紀夫に対する「公開取調室」となる。“自白”するまで連日の「取り調べ」だ。自民党が息を吹き返すには予算委審議しかないのだ。マザーゲートを徹底的に追及して、とりあえず内閣を総辞職に追い込む。これしか党活性化の道はない。
沈みそうな難破船からは、ネズミが逃げだそうとするのが常だ。1993年の下野の際も自民党から衆参合計で23人が離党している。しかし前厚労相・舛添要一の「自民党の歴史的な役割は終わっており、古い党を再生してもしょうがない」という“新党志向”発言も、山岡と並んで、ピントが狂っている。党全体が「臥薪嘗胆・面壁9年」に直面しているときに、よく言った。タレント系議員は派手なテレビに毒されて、こらえ性がない。だいたい枡添は、カネも、党内基盤も、人望もない。ないないづくしで新党結成とは、聞いてあきれる。狙いは来年の都知事選に立候補するため、民主党に擦り寄ろうとしているのではないか、という見方が党内にある。「池から飛び出た鯉は、干上がる」とは田中角栄の名言だ。
ただ、元首相・中曽根康弘が総裁・谷垣禎一に7日「自民党の方が安定感はある。じっくり腰を構えて徹底的に戦うことがよい」とアドバイスしたのは、適切だ。ここは「去る者は追わず」で、腹を据えてかかるしかない。筆者に親しい自民党幹部が「最近の官僚のうっ積した不満は相当なものがある」と教えてくれたところによると、課長クラスと酒を飲むと民主党政権を指して「敵は」とか「向こうは」と言うそうだ。いくら官僚でも、これだけコケにされては、黙っているのがおかしい。読売だけが小さく報じているが、1月5日官房長官・平野博文に対して事務次官らから不満の声が上がった。「今までのやり方と違う。意欲を持ってやっているが、なかなか指示が出ない」「士気が下がっている」などの反発が出された。まるで羊が吠えたように驚いたが、いかに現政権が政治主導の名の下に官僚を敵に回してしまっているかが垣間見える。
自民党が野党としてかつての社会党や民主党と違うのは、検察当局も含めて根強い官僚との人脈的なつながりがあることだ。政策形成の過程を手に取るように掌握出来る。財務省も、防衛省も、外務省も、厚労省も、検察庁も、警察庁も、現政権に不満を抱いている者が多い。鳩山と幹事長・小沢一郎の脇腹にドスを突きつける位の情報は得られるし、もう得ているとも言われる。自民党は、民主党質問の常であったように、新聞からの引用で質問するようでは駄目だ。官僚の情報網をフルに活用して、政権に有無を言わせぬ“爆弾質問”を投げかけることだ。世間をあっと言わせる質問の材料を、質問者個人ではなく、組織的に入手することだ。新聞で言う調査報道を真似なければ駄目だ。
幸か、不幸か、現政権は、内政・外交・カネのすべてに渡ってすきだらけだ。“敵失”だけでも十分戦える材料はある。元首相福田康夫が谷垣に「緻密(ちみつ)に計画を立てて、徹底的に攻めてほしい。予算委員会が勝負だ」と忠告している。たしかに予算委員会論戦は、遠心力が働き始めた党内を引き締める最大のポイントとなる。ここで勝負を仕掛けるしか求心力を取り戻し、党再生を目指す道はない。まず手始めに鳩山の母親や小沢など16人の参考人招致を要求したが、これはけんかの仕方を知っている。審議拒否など旧態依然たる野党戦術はもってのほかだ。的確にポイントを突いていくだけで、支持率も必ず上昇に移る。
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