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2010-01-05 07:45
鳩山は辞任せざるを得まい:新春政局展望
杉浦正章
政治評論家
人間古希間近ともなれば気は短くなる一方だ。ああでもない、こうでもない、どうでもないの論評は、ネットに似合わない。今年の政局を直感で大胆予測すればこうなる。太筆書きの1字は民主党「起承転結」の「転」だ。「起」が総選挙圧勝、「承」が政権発足、「転」が転換、「結」が天王山の参院選だ。まず首相・鳩山由紀夫は、通常国会冒頭から“マザーゲート事件”で“風前の灯”となり、同国会中に政権を投げ出さざるを得なくなるだろう。すなわち「転」だ。参院選挙は幹事長・小沢一郎の「汚染」度が著しい上に、総選挙で勝たせすぎたことを「しまった」と思っている有権者の復元志向で、単独過半数などとても無理だ。しかし、民主党政権は継続して、国民の不安感は「最初のまずさが持続する」ことになる。民放テレビでアチャラカまがいの政局予測が盛んだが、政局の本筋を知る報道機関の政治部長経験者や編集局幹部経験者と年末度々会合を持ったが、どの会合でも「鳩山は持つまい」が大勢だった。筆者もそう思う。
第一の理由は、これがすべてを包含するのだが、鳩山に大国を率いるリーダーとしての素質がないことだ。あるべき首相論を述べれば、野党党首なら「3歩歩いて忘却す」でよかったかもしれないが、「綸言汗のごとし」を要求される首相のポジションでは、度重なる前言撤回は致命傷となる。無責任きわまりない印象を国民に植え付ける。その「植え付け作業」は政権100日でほぼ完了の域に達している。発言習癖が“病的”であるが故に、正常に戻ることはまずない。次ぎに国の命運を決する外交・安保が無知の部類に属するほどでたらめであることだ。「君側のミスリーダー」とも言える一評論家にミスリードされて、「よし」としてきたことが、すべてを象徴している。普天間移転問題も年頭4日の記者会見で「沖縄県民の気持ちを大事にしながら、一方で日米合意もある」などと依然方向性すら示せないでいるが、恐らく最終決断できないのではないか。最終決断できなければ、普天間は“永続”することになる。これも深手を負うことになるが、辺野古への移転を決断しても、3党連立は崩壊し、致命傷となる。
経済・財政運営も元タレント議員の「予算仕分け」が象徴するように、「見せ物政治」の域を脱していない。政権には結果が求められていることが分かっていない。年末に打ち出した新成長戦略の「名目3%成長」を見れば、それが明白である。過去20年間達成したことのない成長率を提示して、憶面もない。おまけに自公政権が過去に打ち出した物と酷似している。マニフェストでだませたから、成長率でもだませると思っているのだろうか。心ある国民にしてみれば、「もういい加減にしろ」であろう。「コンクリートから人へ」のキャッチフレーズで公共事業を18.3%削ったと胸を張るが、影で泣くことになる500万人の失業者対策がない。あっても先の話だ。人を大事にする政治なら、まず「ジェスチャーより失業者」対策を先にするという発想があるべきだ。それがない。もちろん来年度予算の持続性欠如は指摘するまでもない。コンクリートへの拒絶反応で「鳩山不況」は定着しつつある。子供手当は賢い主婦なら、吾が子の将来の学費に貯蓄するだろう。内需拡大にはつながらない。ばらまきと確信的な離米路線、天皇軽視、日教組など労組との連携などは、「疑似社会主義」とも言える路線であり、国民の選択ではない。
最後に「マザーゲート事件」だ。朝日新聞にも事態を分かった編集委員がいて、年末の座談会で「知らなかったで通るわけがない。即刻辞めるべきだ」と主張していた。確かにそうだ。国民に模範を示すべき首相が、12億円の「脱税に限りなく近い資金」を母親から受け取り、口を拭っていて済むのか。構図が分かりやすいだけに、国会で追及を受けて、ピントの狂った答弁を繰り返す度に、支持率は落ちる。鳩山が首相でいる限り、内閣支持率は半年で10%台にまで落ち込むだろう。
そこで問題は小沢がどうでるかだ。小沢の正月は得意絶頂の幕開けだ。しかし平家物語のワンフレーズ「おごれる人も久しからず、唯春の夜の夢のごとし」だ。有頂天はこの正月が最後だろう。小沢は優秀な政治部長経験者程度の判断力がある数少ない政治家だ。鳩山に対する読みは恐らく筆者と一致しているだろう。したがって、鳩山をいつ代えるかが小沢の脳裏を離れない状況になっている、と見て間違いないだろう。代えれば民主党政権は刷新ムードが出て息を吹き返す。それも参院選前に断行しなければ意味はない。恐らくそう小沢は思っている。リクルート事件と消費税で1989年6月3日に総辞職に追い込まれた首相・竹下登の例もある。小沢は4、5月ごろ予算成立と鳩山のクビを引き替えにするのが、参院選までの有権者の“忘却期間”を考えると、一番の得策と脳裏にひらめいているかもしれない。しかし、年末から年始の紙面を賑わしている「オザワゲート事件」が自らを直撃する可能性も大きい。世田谷の土地購入代金4億円をめぐる疑惑で、東京地検は小沢本人を任意で事情聴取する方針ともいわれる。自分が火の車になりかねないのだ。3月には秘書の裁判で判決も出る。反小沢の渡部恒三らの動きも表面化しよう。「マザーゲート」に「オザワゲート」が複雑に作用して、民主党政権は「転」の段階に入る。
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