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2009-11-27 08:02
軽佻浮薄が目立った仕分け作業
杉浦正章
政治評論家
「1位を目指す必要があるのか。2位ではいけないのか」という発言が誰かに似ていると思ったが、断頭台の露と消えたマリー・アントワネットだ。巷間「パンがないなら、ケーキをお食べ」と言ったと伝えられる。マリー・アントワネットには無知から来る無邪気さがあるが、参院議員・蓮舫の場合は無知に加えて思惑があって、度し難い。本来地味で複雑で専門的な作業に民放テレビキャスターの軽佻(けいちょう)浮薄を持ち込んだ。もちろん憶面もなくポピュリズムを前面に打ち出す民主党政権の路線にピタリと呼吸が合っている。今日でようやく仕分け作業なるものが終わるが、市場のプロは「仕分け劇場」の本質を見極めている。株は下落が続き、円高にも歯止めがかからない。
ノーベル賞学者は尊敬すべきだが、たかが蓮舫批判のために全員が一堂に会さなければならないとは情けないではないか。自民党政権の農協や医師会の予算争奪ぶりを思いださせる。声高に反論できずに、泣き寝入りの福祉関係者や庶民も多いのだ。野依良治が「歴史という法廷に立つ覚悟があるのか」と大上段に振りかぶったが、蓮舫はこう反論するだろう。「歴史の法廷になど立ちません。来年の参院選に立ちます」と。要するに、カエルの面になんとやらだ。「2位ではいけないのか」に続く蓮舫・アントワネットの極めつきは、自衛隊の広報施設「りっくんランド」発言だ。見学者から「カネを取れ」とのたまうたのだ。「例えば、有名なテーマパークは、家族4人で行ったら数万円を超えても、リピーターのお客さんはあとを絶たない。それが何なんだろうか? それはやはり努力であり、見せ方であり・・」だそうだ。自衛隊がディズニーランド並みのショーをして、入場料を取る。こんな面白い話はないが、これを称して荒唐無稽(むけい)という。だらしがないのは、防衛省担当者だ。反論できずに、「われわれは努力が足りません。さらにいっそう、おっしゃるような努力しなきゃいけないと思います」だそうだ。ここは卑屈にならずに、質問者の無知を戒める場面だった。
蓮舫が象徴したのは、民主党政権のポピュリズムに他ならない。予算編成を劇場化して、前政権とはこれほど違います、と強調する。予算を節約して悪いわけはないから、大衆は引き寄せられる。民放キャスターは蓮舫に「もっとやれ」(サンデープロジェクト・田原 総一朗)とけしかける。しかし、政府が閣議決定しているように、仕分け作業に法的根拠はない。民間人を“代表”として参加させたが、これも法的根拠は皆無だ。マスコミに「削減」の文字が躍るが、削減規模は95兆の概算要求から見れば微々たるものだ。とても足りない。
結局、政治家が削減作業をやり直すことになる。これだけ批判の強い科学技術予算は“復活”せざるを得まい。そうだとするならば、年内予算編成に向けての貴重な日時を、2週間かけてマッチポンプに費やした側面が、浮き彫りとなる。一番重要なのは、派手な仕分けの影に重要な問題を隠していることだ。民主党政権は、自らの概算要求が史上最大の水膨れ予算になり、これを組み替えで対処しなければならないのに、態勢を整えないのだ。史上最大の赤字国債発行も目前であり、長期金利高騰に影響を及ぼす。円高は、デフレの日本経済に甚大な影響をもたらす。景気が落ち込むのは目に見えているのに、前内閣の緊急景気対策予算を3兆円削って、「勝った勝った」と喜んでいて、使途がまだ決まらない。景気対策など眼中にない様に見える。就任以来円高を放置している財務相・藤井裕久も問題だ。まさにビナインネグレクト(静観)をしているのだ。ひたすら人気取りの劇場政治にうつつを抜かして、大きな問題が忘れられている。
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