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2009-09-15 17:10

マニフェストと君子豹変

伊藤 英成  元衆議院議員
 先の衆議院選挙は民主党の圧勝に終わった。明日には鳩山政権が発足する。
 今回の選挙では各党がマニフェスト(政権公約)を発表し、新聞各紙、テレビ、雑誌もマニフェストを極めて重視し、その解説やマニフェストの各党比較を報じた。マニフェスト選挙でもあった。

 選挙後、新聞論調やテレビでのニュースキャスター、また学者などからも民主党の政策に懸念や疑問を表しながら「民主よ、豹変を恐れるな」とか「国民のための政治と選挙前の約束に矛盾が生じたときは、ためらわず約束を修正すべきだ」などその同趣旨の言葉をしばしば見聞きする。勿論、「君子は豹変する」という言葉は「君子がその過ちを改めると鮮やかに面目を一新する」(広辞苑)という意味であるが、識者が政権公約修正にあまり条件を付けずに言及することが多いのに私は危惧を感じる。

 マニフェストという言葉は、19世紀英国において総選挙時の選挙公約として使われたのを起源としているようであるが、日本においていま使われるマニフェストについては、ウイキぺディアによれば、「従来の選挙公約とは異なり、何をいつまでにどれくらいやるか(具体的な施策、実施期限、数値目標)を明示するとともに、事後検証性を担保することで、有権者と候補者との間の委任関係を明確化することを目的としている。つまり、いつ(実施時期)の予算(目標設定)に何(具体的な施策)を盛り込んで実現させるのかを明文化するものであり、必然的に政権を取り予算を制定し行政を運営することが条件となるため、「政権公約」という訳があてられ、定着しつつある」と説明されている。明日首相に就任する鳩山民主党代表は、選挙中に次のように述べている。「マニフェストは単なる公約だとは思っていない。国民との契約だと思っている。できなければ責任をとる。」(8.20朝日)

 マニフェストに提示した政策をよくよく検討したら、あるいは状況の変化により、国民のために修正する必要がおこる場合も万が一にはあるかもしれない。しかしそのときはしっかりと国民に説明することが必要であるし、場合によっては、国民への謝罪も必要かもしれない。それはマニフェストへの信頼、政党や政治家への信頼に関わることである。
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