ホーム
新規
投稿
検索
検索
お問合わせ
2009-07-06 09:24
「後入れ先出し」の麻生首相
大藏 雄之助
団体役員
会計手法に「後入れ先出し」というものがある。一般の家庭では多くの場合、缶詰のような保存の利く品であっても、先に買い入れた古いものから先に消費する。これは「先入れ先出し」である。しかし、大企業で原料などを大量に備蓄しているものは、いちばん後に仕入れたものを先に使用するという形をとる。たとえば100トンの石油タンクの中には、何回も買い足した分が混じっているが、帳簿上はそれぞれ仕入れた時の異なる原価が記載してある。通常時間的経過とともに物価は値上がりすることが多いので、企業は在庫価格を低く維持するために、高く支払った直近のものから出庫した形式をとる。
麻生首相は「ぶれる」と評されるが、去年の自民党総裁就任以来、解散・総選挙意図表明から定額給付金の取り扱い、北方領土発言、公務員制度改革、政治家の世襲制限、厚生労働省の分割、西川日本郵政社長更迭問題、最近の党役員入れ替えに至るまで、すべて「そんなことを言った覚えはない」とか、「趣旨が違う」とかと、前言を取り消している。誰かから進言されると、すぐにそれを口にし、後日別の意見を聞くと、ほとんど機械的にそちらの説に従う。これはまさに「先入れ後出し」にほかならない。
中曽根元首相も中国の抗議を受けて靖国神社参拝をやめるなど、やや節操に乏しく、「風見鶏」と称された。だが、「風見鶏」自体は、悪いことではない。その時の風の吹き回しをよく見極めて、短期的な政策を変更することは大事である。消費税導入や死んだふり解散の大芝居はなかなかのものであり、現首相のKY(空気が読めない)とは別次元である。
「先入れ後出し法」は、あまりにも実際の在庫価格からかけ離れるということで、2011年3月で廃止されることが正式決まっている。もっとも、麻生首相にはとても「在庫」があるとは思えず、入れたものをそのまま出しているだけのようだから、「先入れ後出し」の名にも値しないかも知れないし、近く正当な決算を迫られるであろう。
>>>この投稿にコメントする
修正する
投稿履歴
一覧へ戻る
総論稿数:5580本
公益財団法人
日本国際フォーラム