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2009-06-20 22:31
台湾の「現状維持」のために日本は何ができるか
小笠原高雪
山梨学院大学教授
およそ1年前の馬英九政権の発足以来、台湾の中国への接近ぶりが関心を呼んでいる。事態がこのまま進行してゆくならば、「台湾の香港化」も時間の問題なのではないか、といった懸念も一部に現れている。中台関係の変化の速度は大方の予想を上回るものであるし、政治問題を棚上げにした経済関係の拡大に危うさが伴うことも確かである。その意味において、台湾の将来に関する懸念が現れることは、全く理解できないことではない。
しかし、台湾の将来に関し過度の悲観論に陥ることは適切ではないであろうし、現政権の意図を不信の目で眺めるようなことは厳に慎むべきであろう。陳水扁政権が台湾名義の国連加盟の是非を公民投票に問おうとしたとき、米国はそれに対する不支持を明示した。日本は過去10年間に幾つかの地域協力構想を進めてきたが、それらはいずれも台湾を除外していた。こうしたなかで、台湾が「現状維持」に当面の目標を限定するのは、むしろ自然なことというべきであろう。
そうであれば、国際社会がさしあたりなすべきことは、台湾の安全と発展に役立つような施策を講じ、「現状維持」の基盤を強化することである。米国はすでに、台湾関係法にもとづき防衛用の武器売却を決めている。米国はさらに、事実上の大使館である台湾米国協会の新築用地を獲得するとともに、警備要員を配置する計画であると伝えられる。海兵隊が配置されるか否かは不明であるが、いずれにしても、こうした動きは台湾の安全に寄与するものと考えられる。
日本の立場は米国のそれと大幅に異なっており、日本が講じることのできる施策は当然ながら限られている。しかし、だからといって日本は傍観者に徹するべきであるということにはならないし、台湾の将来に関し「懸念」を表明するのであれば、なおさらである。「現状維持」の基盤の強化のために、日本はどのような貢献をできるであろうか。
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