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投稿者:河村 洋 (東京都・男性・外交評論家・50-59歳) [投稿履歴]
投稿日時:2017-12-24 11:20 [修正][削除]
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No.4043
 『ナショナル・アフェアーズ』誌のユバル・レビン編集員はその原因をさらに「トランプ氏は、経営の天才である自分について、主流派の政治家や知識人より優秀だと信じ込んでいるからだ」とまで評している。よってトランプ氏がウッドロー・ウィルソン以来のアメリカ外交政策の実績と伝統を何の未練もなく捨て去ろうとすることに不思議はない。トランプ氏は、自分より知識も見識もある自らの政権内部の閣僚からの助言さえ一笑に付してしまうという。その典型例が、ジェームズ・マティス国防長官とレックス・ティラーソン国務長官が、中東での自国の外交官と駐留部隊の安全確保の観点から、エルサレムへの大使館移転に深刻な懸念を表したにもかかわらず、トランプ氏はその決行に踏み切った一件である。トランプ氏を「政権内の大人達」によってコントロールすることは実際には非常に困難である。

 さらにトランプ政権が、本質的にアメリカの誇るべき外交官集団に対してさえ侮蔑的だということを理解する必要がある。それはレーニン主義に基づいて「行政国家の破壊」を目指すバノン氏一派だけのことではない。国際社会は、北朝鮮危機への対応ぶりなどから、ティラーソン長官について、マティス長官やH・R・マクマスター国家安全保障担当補佐官と同じく、トランプ大統領を主流派の政策に導こうとする「政権内の大人」と見なしている。確かにティラーソン氏はオルタナ右翼ではないが、実際には国務省のプロフェッショナルな組織を損益重視の観点から破壊している。新規卒業者の職員募集を停止したことで、数百万ドル以上のプロジェクトが大幅な人員不足に陥るであろう。また、職業外交官達はティラーソン氏による企業経営者さながらの組織運営に当惑している。人員削減計画は省内全職員の9%にも達するほど急激なものである。さらに国務省の外交官の間ではティラーソン氏が連れてきた少数の側近だけで政策形成を行ない、自分達が排除されることへの批判が高まっている。

 問題は「外交の効率性」の名のもとに行なわれる国務省における人員削減と30%に及ぶ予算削減である。ティラーソン氏は重要な問題を担当する部局や特使を削減している。廃止された特使は省内の他の部局に統合されるというが、ここにはシリア、スーダン、南スーダン、北極圏の担当が含まれている。これに対し議会の反対派は「特使は政治家の間で安全保障上の重要な課題に注意を引きつけるために必要で、こうした問題が忘れ去られることなきようにするためのものである」と述べてティラーソン氏の理解を求めている。また民主化、人権、労働を担当する局が廃止されるという。国務省各局から国連代表部に派遣される人員も削減される見通しだ。例えばアフリカ局では、現行の30人から3人に削減される。さらに問題視すべきは、ティラーソン氏が「上院での承認にかかる時間と費用の節約のため」と称して省内の重要ポストの人員を指名していないことである。中でもアフリカ、東アジア、南および中央アジア、近東、そして西半球担当の国務次官補が空席のままである。

 こうした事態について、ニコラス・バーンズ元国務次官とライアン・クロッカー元駐イラクおよび駐アフガニスタン大使は『ニューヨーク・タイムズ』紙11月27日付の連名投稿で「トランプ大統領の急激な国務省予算削減と我が国の外交官および外交そのものを軽視する態度は、素晴らしい外交官集団の喪失につながりかねない脅威である」と非難している。ティラーソン氏は国務省と国際開発庁の統合さえ打ち出しているが、外交機関と開発援助機関の役割は根本的に異なるものである。主要先進国では両者は分離されているのが通例だ。国務省は政策形成と外交を通じてアメリカの対外関係に対処するのに対し、国際開発庁は効果的で説明責任のあるプログラムの管理運営を通じて現地社会のエンパワーメントを支援する。それぞれの目的に応じ、国務省では中央集権的でヒエラルヒー化した組織運営がなされるのに対し、国際開発庁ではボトム・アップの運営がなされている。よって国務省の職員はゼネラリストで占められるが、国際開発庁ではスペシャリストで占められる。

 しかし真の問題はティラーソン氏でなくトランプ氏である。11月末にメディアでティラーソン氏に代わってマイク・ポンぺオCIA長官の国務長官登用が伝えられた時期、上述のブート氏は、『USAトゥデー』紙11月30日付けの論説で「ポンぺオ氏が、CIAがロシアの介入は選挙に影響を与えなかったとの結論に達した、という誤った主張をしたことで情報官僚機構と衝突した」ことを指摘した。マティス氏やマクマスター氏のような純然たるプロフェッショナルな軍人と違い、ポンぺオ氏は陸軍を退役してから政党政治家となっているので、そのようにトランプ氏にすり寄るのも不思議ではない。この政権が本質的に政府の専門的官僚組織に侮蔑的なことを考えれば、「政権内の大人」がトランプ氏をコントロールするなどという期待は、あまりに楽観的である。おそらく彼らには、「アメリカが作り上げた世界」が、これまでどれほどアメリカの国益と国際社会全体に資してきたかを理解することはできない。現在の政権内ではマティス氏ぐらいしか「大人」はいないのではないか。先のアラバマ上院補欠選挙でロイ・ムーア氏が落選した今、超党派の良識と良心が勢いを取り戻し、トランプが引き起こしかねない「衆愚政治」に立ち向かうことが死活的に重要となっているといえよう。(おわり)

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