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2026-08-16 01:15
イラン戦争でアメリカは失敗し中国は相対的に成功を収める形になっている
古村 治彦
愛知大学国際問題研究所客員研究員
イラン戦争はアメリカとイスラエルの失敗(敗北)という評価で定まっている。そのために犠牲になった人々のことを思うとやりきれない気持ちになり、ご冥福をお祈りすることしかできない。人間はなんと愚かであろうかということを認識するとともに、ドナルド・トランプとベンヤミン・ネタニヤフの誤った判断に関しては、政治指導者としてそれ相応の責任を負わせることが必要だ。今回のイラン戦争に関して中国は表舞台で目立った活動はしていない。米中首脳会談やイランのアッバース・アラグチ外相の訪中があり、そこでイラン戦争について議論されたことはあるだろうし、アメリカとイランによる和平交渉実現には、パキスタンが仲介国として大きな役割を果たしたが、同時に裏方として中国がサポートをしたことは知られている。
また、アメリカがイラン戦争で失敗することで、相対的に中国が成功を収めることになっている。それは、中東地域におけるアメリカの存在感と影響力が低下しており、イラン戦争がそれに拍車をかけることになっているからだ。中東地域はイランを除いて、親米の国々ばかりであり、石油取引は米ドルのみで行うというペトロダラー体制によってウィンウィン関係になっていた。しかし、世界経済で少しずつであるが「脱ドル化(dedollarization)」の動きが始まっている。サウジアラビアは中国向けの石油取引で人民元での取引を行うようになっているのはその一例だ。
中国は「棚ぼた(windfall)」で相対的な成功を収めている。そして、イラン戦争は、国際政治の構造に大きな影響を与える。それは、アメリカへの信頼性の低下によって、アメリカの世界支配の終焉を早めるということになる。アメリカとイスラエルが大規模攻撃を行ったことで始まったイラン戦争であり、和平となるためには、アメリカとイスラエルがイランの提示する条件を受け入れることが基本となる。もちろん核開発に関しては国際的に受け入れがたいものはあるが、賠償やホルムズ海峡の管理については、イランの条件を受け入れるべきということになる。アメリカはイランに対して、再度の大規模攻撃がしにくい状況であり、イラン側としてはある程度交渉を引き延ばして、アメリカの苦境を長引かせることも可能となる。そうなると、アメリカへの信頼性も揺らぎ、同盟関係が変化していくことになる。そうなれば、相対的に中国の存在感と信頼性が高まることになる。
私はトランプ大統領を「アメリカの世界支配を終わらせる墓掘り人」と表現したことがある。しかし、それは、アメリカの内向き志向をさらに強めるという意味であった。まさか、海外への介入で大きな失敗をして、アメリカの衰退を加速させる役割を果たすとは思っていなかった。しかし、現実にはトランプはそのような役割を果たしている。「敵に塩を送る」どころではない、利敵行為ということになる。
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