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2017-04-27 07:56
求められる冷静な軍事的分析
加藤 成一
元弁護士
シリア攻撃に裏打ちされたトランプ米国大統領による先制攻撃をも辞さない旨の強硬発言に威迫されて、北朝鮮の日朝国交正常化担当大使は、「戦争になれば、日本が最大の被害を受けるだろう」などと、日本を「恫喝」した。これは、いわゆる「平和ボケ」した日本国民に恐怖心を煽り、日本政府をして米国政府に対し北朝鮮への攻撃をさせないように仕向ける「戦わずして勝つ」心理作戦だと言えよう。北朝鮮は、これまでも、米国から軍事攻撃を受ける恐れが生じ、自国が危機的状況になると、必ず「ソウルを火の海にする」などと「恫喝」して、韓国国民を恐怖に陥れ、米国による軍事攻撃を防いできた。そして、これまでのところでは、常にこれが奏功して、北朝鮮は米国からの軍事攻撃を免れ、その間、核開発やミサイル開発を進めてきた。今回も同じ「作戦」なのであろう。
しかし、本当に戦争になれば、北朝鮮の言う通り、日本が最大の被害を受け、ソウルが火の海になるのであろうか。ここは冷静に軍事的に分析する必要がある。周知のとおり、北朝鮮の戦闘機や艦船は、最先端のものはなく、旧式のものがほとんどであるから、最先端の兵器を保有する米軍に比べ圧倒的に戦闘力は劣る。潜水艦も速度が遅く、静寂性が劣り、米国空母艦隊には容易に近づけない。北朝鮮には日本のようなミサイル防衛システムがないから、米国の弾道ミサイルに対する迎撃力は著しく劣る。また、早期警戒機を持たない北朝鮮は、超低空飛行の巡航ミサイル(トマホーク)による攻撃を防げない。
米国は、原子力潜水艦2隻からだけでも約300発のトマホークを発射できる。さらに、北朝鮮の弾道ミサイルについては、搭載する核小型化完成の確証がない上に、トマホークにより固定式の発射基地は破壊されるから、その分反撃能力が低下する。また、米軍が4月13日にアフガニスタンで使用した「大規模爆風爆弾」(MOAB)によれば、北朝鮮の地下軍事施設の破壊も可能とされる。その上、日本や韓国には、米軍の高性能レーダーシステムと連動するミサイル防衛システムがあるから、北朝鮮の弾道ミサイル攻撃に対しても、相当程度の迎撃が可能である。
こうして見ると、米軍が先制攻撃をすれば、北朝鮮にとっては、米軍の攻撃から自国を守ることに集中せざるを得ず、日本や韓国に対し本格的に反撃する余力や能力は限定的と言えよう。そして、仮に、北朝鮮が切羽詰まって核を使用したとすれば、その時には、米国からその数倍、数十倍の核による壊滅的な報復攻撃を受けるであろう。従って、日本としては、北朝鮮からの反撃を必要以上に恐れる必要はない。日本が、北朝鮮の常套手段である「恫喝」に屈すれば、それこそ北朝鮮の思う壺であろう。
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