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2009-01-20 10:45

(連載)ガザ紛争とテロとの闘い:世界無極化の阻止(2)

角田 勝彦  団体役員・元大使
 テロリスト側の「民間人の影に隠れての攻撃」という戦術を原因とするものであっても、民間人の犠牲者が多数になれば、世界の指弾は免れない。テロ容疑者への虐待や拷問は許されない。グアンタナモ米海軍基地のテロ容疑者収容所などは閉鎖されよう。おりしも、ミリバンド英外相は、15日付有力紙ガーディアンへの投稿で、「テロは世界各地で多様な事情から発生しているにもかかわらず、対テロ戦争という概念は、諸グループを十把一絡げにし、善と悪あるいは穏健派と過激派というように、2者対立の境界線を引いてきた。しかし、それを進めれば進めるほど、あまり共通点を持たないグループの統一に手を貸すことになった」と、逆効果が大きかったことを指摘し、また「テロ対策として軍事的手段を何よりも優先しようとする考え方は、解決につながらない」と批判した。同じ15日、インド西部ムンバイを訪問した同外相は、昨年ムンバイ同時テロに見舞われたタージマハルホテルで、同趣旨の演説を行った。

 たしかに国際テロは、統一された組織、例えばアルカイダによるものではない。暴力的過激主義及びテロ組織は多様である。国際テロに対抗する当局は、それぞれのケースに応じ、終息のため必要な対策を講じなければならない。しかし、テロとの闘いの概念自体を否定するのは行き過ぎであろう。国際テロは多くの共通点を持ち、対応策も国際的治安対策として各国の共通の認識と協力を必要とする。ムンバイ同時テロのような国際テロは、国家間の(核?)戦争をも引きおこしかねないのである。軍事的手段を最優先とするかどうかには議論があるが、国内治安の維持に警察力が必要なように、国際テロとの闘いにおいて軍事的手段が不可欠なのは論を待たない。

 イスラエルの盟友ブッシュ米大統領は、1月15日の全米向けお別れ演説で、米政府が2001年9月11日の中枢同時テロ後「新たなテロ攻撃から国土を守り抜いた」と強調する一方、大規模テロ再来の脅威はなお存在しているとして、オバマ次期政権下でも警戒を緩めないよう訴えた。9・11後、アフガニスタンやイラクに侵攻、世界規模の対テロ戦争(テロとの戦い)にまい進したブッシュ大統領らしい挨拶だった。オバマ米新政権も、アフガニスタンでの国際テロ組織アルカイダと旧支配勢力タリバンとの戦いを完遂するため、アフガニスタンに米兵最大3万人を増派し、アフガン駐留部隊を6万人規模とする国防総省の計画を承認する見通しとされている。また13日には、オバマ次期政権とブッシュ政権の高官は、米本土の都市部への大規模テロ攻撃を想定した図上演習をホワイトハウスなどで実施した。(つづく)
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