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2008-05-28 00:00
中国の戦略構図は、「勢力均衡」でなく「覇権」の追求
秋元一峰
海洋問題研究者、元海将補
2007年4月以来、この政策掲示板「百花斉放」をつうじて、中国の海洋進出を危惧する投稿を続けてきた。最近のものから順に遡って列挙してみると、下記の7本になる。
2008年4月15日 「中国のシーパワーが日本を呑み込む」
2008年2月5日 「”鹿を逐う”中国のシーパワー」
2007年12月5日 「着々と進む中国海軍の『外洋海軍』化」
2007年10月9日 「とうとう大西洋にまで乗り出した中国海軍艦艇」
2007年8月14日 「三度『中国海軍が空母を保有する日』を考える」
2007年6月19日 「再び『中国海軍が空母を保有する日』を考えよう」
2007年4月24日 「『中国海軍が空母を保有する日』を考えよう」
ところで、さる4月24日、幾つかの新聞が海南島南部の三亜にある中国海軍基地の衛星写真を掲載した。米科学者連盟(Federation of American Scientists: FAS)の Hans Kristensen 研究員が公表したものである。岸壁から陸に向かってトンネルが掘られている写真である。中国海軍は三亜基地に新型の晋級と呼ばれる戦略原潜(長距離戦略ミサイル搭載)を配備しており、米国の情報機関は、三亜基地が戦略原潜と新型の商級攻撃型原潜(水上艦艇を攻撃)、それに空母のための主力基地となる可能性を示唆している。さて、そのトンネルであるが、11本あり、岸壁にある入り口から丘に向かって掘られている。入り口の高さは18メートル、潜水艦が潜航したまま出入りが可能である。近くには潜水艦が磁気探知されるのを防ぐための消磁装置を備えた施設も映し出されている。Daily Telegraph 紙は「まるでジェームス・ボンドに出てくるような秘密地下施設につながり、そこには20隻もの原潜を潜ませることができる」と記している。
2001年4月に米海軍のE-P3偵察機が中国海軍から攻撃を受け、海南島に不時着した事件は、記憶に新しい。建設中の中国海軍基地を偵察していたとも報じられた。海南島は南シナ海に位置する戦略的要衝である。東沙諸島、南沙諸島を睨み、台湾海峡に臨む。海軍艦艇のインド洋への進出にも適している。台湾有事の際、来援する米空母にとって、海南島から潜航したまま隠密裏に現場に向かう原潜群は、まさに最大の脅威となるだろう。5月12日に台湾国防省から発表された『国防白書』(2008年版)は、台湾周辺における中国軍の活動の活発化を指摘している。同白書によると、中国戦闘機の哨戒飛行が急増し、調査船による台湾領海への進入は、過去3年間で20回を超えている。調査船は中国海軍の潜水艦の行動のための海図を作成していると見られている。
毎年2桁台で国防費を増大させている中国は、着実にその行動能力を拡大している。それは冷戦時のソ連海軍を遥かに凌ぐ勢いであると言える。今、米中は冷戦状態ではない。米国や日本を含む近隣諸国と中国は経済的に極めて強い相互依存関係にある。考察すべきは、それにも拘らず何故、中国がそのように攻撃的な海軍力拡張を続けているのか、である。国際安全保障における戦略構図を「勢力均衡」と「覇権」の2つに分類すると、現状から見る限り、中国は「覇権」による安全保障を目指していると考えざるを得ないのではないか。
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