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2008-02-18 00:00
中国政府は判断を間違うな
杉浦正章
政治評論家
中国製冷凍ギョーザ中毒事件は、あらゆる状況証拠が中国国内でのメタミドホス混入を裏付けているにもかかわらず、中国政府の情報操作は「中国側に問題はなかった」の一点に絞られているかに見える。しかし、中国政府はこのままうやむやに“幕引き”が行われた場合、国家主席胡錦濤の今春来日が成功裏に終わるかどうかの保証はないと銘記すべきである。今はまさに重要ポイントだ。ここで中国政府は判断を間違うべきではない。福田首相も20日来日する唐家セン国務委員との会談で早期決着を主張すべきだ。
大国で唯一情報操作のできる国中国のギョーザ事件に関する報道ぶりを観察することは興味深い。発生当初は全く報道されないままだったが、2月1日になって新華社系の新聞「参考消息」が「日本メディアが『毒ギョーザ』事件をあおる」との見出しで伝えたあと、例によってウェブ上に、事件へのコメントが出始めた。一般市民は知らないはずなのに、「日本の自作自演」「みんなで日本製品をボイコットしよう」といったコメントが駆け巡った。まずウェブ上で情報操作し、事件は日本側の捏造との風評をたてる訳だ。ついで検疫総局の副局長魏伝忠の6日の発言になる。「中国国内で人為的に毒物を混入させた可能性は極めて小さい」との見方を示した上で、「一部の極端な分子は中日友好の発展ぶりに不満を持っている」と述べ、事件の日本発生を示唆するような発言をした。
こうして下地を作った上で、国営中央テレビや新聞各紙が16日になって一斉に「中国側に問題はなかった」と堰を切ったように報じ始めている。国内的には実に見事な情報操作である。もちろん科学的根拠はなく、極めて情緒的な情報操作である。犯人が中国人だったら“引っ込み”がつかないほどの突っ走り方だ。外から見ていると中国政府はこのままほおかむりして、問題をやり過ごそうとしているかのようにも見える。しかし注目すべき兆候も現れた。中国外務省の報道官劉建超や検疫総局の発言が「ギョーザ事件は中国食品の安全問題でなく、個別の事件」というコメントで一致してきた点である。これは見方によっては、本来中国食品は安全だが、一部個別の事件としてギョーザ事件が発生したという線に持ってゆこうとしているのかもしれない。そうであるならまだ期待は持てる。
主席の来日、オリンピックという重要行事を控えた中で、中国政府は、ここで誤判断を下してはならない。誤判断とは、事をあいまいのまま処理することである。科学捜査の結果、警察庁は、(1)メタミドホスは日本国内流通品と別物である、(2)穴もない袋の中に日本で混入することはなく、混入は中国の製造過程でしかありえない、との判断に至っている。日本国民の大多数は個別の事件であれ何であれ、中国の製造過程での混入事件であると信じており、うやむやに終われば確実に現れる弊害が既に目に見えている。
それはまず、市民レベルでは現在も発生している中国食品の事実上のボイコットが長期に継続することである。またオリンピックを夏に控え、世界各国からの選手団に「食の安全」という開催国にとってその資格を問われる根源的な問題で、不安感を放置しておくことにもなる。食料品持参の選手団では様にならない。一番重要な問題は、胡錦涛来日への影響である。元首相による靖国参拝で壊れた日中友好関係が、ようやく主席来日で軌道を回復しようとしている時期である。その時期に黒いカラスを白いカラスと言いくるめるような対応をとることは、日中友好の将来にマイナス以外の何物でもない。日本国民が心から主席来日の成功を喜べるようにすること。それはギョーザ事件の早期解決しかありえない。解明が遅れるほど、中国にとっては深刻な痛手となることは目に見えている。
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