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2026-05-13 00:00
(連載2)イラン現代史に関する報道バランスへの疑問
河村 英太崚
外交評論家
また上記のような地政学的観点からすれば、1951年石油国有化紛争時のモサデグ政権が冷戦のパワー・ポリティックスを顧みずにソ連に接近した軽挙はもっと批判されるべきである。この紛争では石油利権に目が向きがちだが、アメリカが介入した理由は共産主義の拡大阻止であった。そもそも第一回国連安保理では、第二次世界大戦後もイラン北部に駐留し続けたソ連軍の撤退が議題になったことを忘れてはならない。ちなみにパーレビ王朝初代のレザ・シャーもナチス・ドイツに接近したがために、英ソ両国の介入で廃位されるという地政学的な失敗を犯した。モハンマド・モサデグ首相は、なぜこれらの地政学的教訓に従わなかったのだろうか?
最後にイラン石油国有化紛争での日本の関りについてだが、日昇丸はエルトゥールル号ではないことをしっかりと認識すべきだ。すなわち出光興産が日昇丸を派遣した理由は、サンフランシスコ講和条約にも調印してやっと乗り出した日本経済の戦後復興を鈍化させないためであった。間違っても、それはイランの反植民地主義ナショナリズムへの人道的な共感が主要な動機ではない。エルトゥールル号遭難事件で日本人がオスマン・トルコ海軍将兵を救った博愛主義を、日昇丸派遣に見出そうとすれば、日・イラン関係史を見誤ってしまいかねない。
私は4月26および27日の先稿にも記した通り徹頭徹尾の反トランプ派であり、今回の対イラン戦争にも賛同しない。そうした立場だからこそ、アメリカとイスラエルの現政権を批判するあまり、イランの宗教保守派がサファビー朝以来数世紀にもわたって保ってきた封建地主としての既得権益に目を瞑るような歴史認識には強い疑問を投げかけざるを得ない。我々は比叡山焼き討ちによって天下一統を果たした国民である。よってイランの宗教保守派に関しても冷静で批判的な視点が必要であり、石油国有化紛争ではレザ・シャーと同じ地政学的な過ちを冒したモサデグ政権に過度に同調してこの国の現代史を語るべきではない。トランプ、ネタニヤフ両政権への批判の傍らで、イラン現代史の認識でバランスを欠いてはならない。(おわり)
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