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2026-04-26 00:00
(連載1)英国王チャールズ3世、「トランプのアメリカ」を建国250周年の国賓訪問:その裏にある地政学と価値観
河村 英太崚
外交評論家
私は昨年5月以来、「トランプのアメリカ」とヨーロッパの間で綱渡り外交を展開するイギリスの動向を注視してきた。トランプ2.0における英米関係は比較的友好的なスタートを切ったが、西半球、ウクライナ、ガザ、イランにおけるドンロー主義によって大西洋両岸の亀裂が深まるにつれ、今や特別関係は深刻に問い直されている。イギリス王室は独立宣言250周年への祝賀のため、まさに政府間関係に不協和音が垣間見られる時期に「トランプのアメリカ」を訪問する。皮肉なことにドナルド・トランプ氏は、民主党優勢州への州兵ないしICE(移民税関執行局)の派兵、関税外交など、建国の父たちの理想とは全く相容れない政策に見られるように、史上でも例を見ないほど憲法を軽んずる大統領である。こうした論争にもかかわらず、国王チャールズ3世とカミラ王妃は4月27日から30日にかけて訪問する予定であり、それに続いて皇太子夫妻が6月ないし7月に訪問すると見込まれている。
1.【イギリス王室外交における訪米】
現在の二国間関係について述べる前に、まずイギリス王室とアメリカ国民の歴史に触れておく。アメリカ独立戦争の契機となったボストン茶会事件は本来、英本国の王政に対する抵抗運動ではなく、「代表なくして課税なし」という原則の宣言に見られるようにイギリス国民としての権利を訴えるものであった。独立初期のアメリカは反英的だったが、新世紀に向けた民主主義の成熟、カナダとの国境紛争の解決、国際主義の高まりにつれて、英米関係は徐々に後年の特別関係へと発展していった。後のエドワード7世が1860年に王子としてアメリカを訪問して以来、王室の訪問はアメリカ国民の間でイギリスに対する好意的なイメージの醸成に非常に役立ってきた。第二次世界大戦勃発寸前の1939年には、ジョージ6世と後のエリザベス皇太后はフランクリン・ルーズベルト大統領と会談し、アメリカ国民の間で蔓延していた「アメリカ・ファースト」という孤立主義の風潮を弱めた。
最も重要な一件は、エリザベス2世とフィリップ殿下がスエズ危機によって悪化した英米関係を修復するため、ジェームズタウンにおけるイングランド人入植350周年を記念して1957年に訪米したことである。しかし、チャールズ国王とウィリアム皇太子は両国間の友好関係を促進できるのだろうか?ドナルド・トランプ大統領がイラン戦争においてキア・スターマー首相を嘲笑したことを忘れてはならない。トランプ氏は東地中海に独自に配備されたイギリス海軍の空母を「おもちゃ」呼ばわりし、スターマー氏が米空軍によるイギリス空軍基地の使用を全面的に許可しなかったことで彼を臆病者だと非難した。究極的に、国王はトランプ氏の右翼ポピュリズムを是認するのだろうか?これらの疑問に答えるために、政権2期目に入った「トランプのアメリカ」に対するイギリスの外交について述べたい。
2.【トランプ2.0における英米特別関係】
新たに就任する大統領がどれほどの問題児であっても、イギリスにはロシアによるウクライナ侵攻が欧州・大西洋圏に重大な脅威をもたらす状況下でアメリカとの特別関係を安定させ、ヨーロッパでブレグジットのダメージを修復することが喫緊の課題であった。このような環大西洋安全保障の環境下で、スターマー政権はドナルド・トランプ氏の再選直前に成立した。トランプ政権2期目の発足時には、イギリスはEUや日本と比べて比較的有利な協定を締結した。悪名高いトランプ関税は他国より低めで、TPD(技術繁栄協定)を通じてイギリスのテック産業へのアメリカからの巨額の投資が合意された。さらにバッキンガム宮殿での晩餐会への招待は、トランプ氏の子供じみた虚栄心を満たした。スターマー氏は「トランプのアメリカ」との関係を安定させることに成功したように見えた。
しかし昨年末にかけてトランプ氏はNATO同盟国への暴言攻勢をますます強め、カナダとグリーンランドの併合を主張したり、関税をさらに引き上げたり、ウクライナへの支援を撤回したりした。ベネズエラの政権転覆はほぼ容易に行われ、スターマー氏はその結果を受け入れた。しかしカリブ海でベネズエラの麻薬密輸船を攻撃したアメリカの行為の合法性について国際的な懸念が高まったため、米国との情報共有を停止した。カリブ海にはイギリスと他のヨーロッパ諸国の海外領土が存在する。そして、イラン戦争は英米関係に致命的な打撃を与えた。トランプ大統領のイラン攻撃は、国際法上の根拠の欠如、戦争の戦略目標の不明確性、アメリカの意思決定へのイスラエルの影響力などについて、国際的に批判されている。
非対称戦争、エネルギー価格、ホルムズ海峡といった問題に加え、ブレア政権下で合同情報委員会委員長、キャメロン政権下で国家安全保障担当補佐官を務めたピーター・リケッツ氏は、ベンヤミン・ネタニヤフ首相が10月末までにイランとその代理勢力の脅威を排除し、議会選挙に備えたいと考えていると指摘している。そうした中でトランプ政権1期目の国家安全保障担当補佐官ジョン・ボルトン氏は、トランプ氏は11月の中間選挙に向けて、ベネズエラで行なったようにイランに対して迅速かつ効率的な戦争を望んでいると述べている。両首脳の意図は一致していないものの、共に選挙を強く意識していることを忘れてはならない。
イギリスの視点から見ると、トランプ氏のイランに対する戦争は戦後の英米関係軽視である。フランス国際戦略研究所(IRIS)のジャン=マルク・ヴィジラント氏は、スエズ危機後の英仏の環大西洋戦略を対比している。予期せぬ衝突を避けるため、イギリスはアメリカの意思決定に一定の影響力を持ち、ヨーロッパでの先方の軍事プレゼンスを維持させるために、アメリカとの緊密な戦略的関係構築へと舵を切った。一方、フランスは自主独立の核兵器開発とNATO統合軍司令部からの離脱によって、アメリカからの戦略的自律性を追求した。ジョージ・H・W・ブッシュ政権下の湾岸戦争とジョージ・W・ブッシュ政権下のイラク戦争において、イギリスはアメリカと戦略的に連携していた。しかしイラン戦争でトランプ氏はネタニヤフ氏とのみ意思疎通を図り、イギリスは蚊帳の外に置かれた。スターマー氏がトランプ氏を支援する理由が、どこにあるのだろうか?
さらに重要なことにイラン戦争はヨーロッパでは非常に不評で、いかなる形でもトランプ氏とネタニヤフ氏を支持すればNATO加盟国間の対ロシア防衛費増額の公約を破綻させかねない。そのためイギリスはフランス式の戦略的自律性を高める方針を採り、ホルムズ海峡における航行の自由に関する会議を主催した。改革党のナイジェル・ファラージ党首や保守党のケミ・ベーデノック党首といった親トランプの下院議員は開戦時に、スターマー氏に英米特別関係のためにも参戦せよと要求したが、今や彼らはトランプ氏への支持を撤回している。これは何かと物議を醸すトランプ氏の平和委員会の役員である労働党のトニー・ブレア元首相にも当てはまる。彼らはサッチャー派のクリス・パッテン上院議員でさえ、イギリスは「トランプのアメリカ」との特別関係を前提とすべきではないと主張していることを念頭に置くべきだった。(つづく)
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