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2025-09-25 00:00
フランスの苦悩・・日本と同じ少数与党で政治不安
舛添 要一
国際政治学者
フランスでは、国民議会で信任投票が否決され、9月9日に退陣したフランソワ・バイル首相の後任に、マクロン大統領はセバスチャン・ルコルニュ国防大臣(39歳)を指名した。2期目のマクロン政権では、実に5人目の首相である。なぜ、このような状況になったのか。石破首相が退陣した日本の政治と共通した課題がある。2022年6月の国民議会選挙で、マクロンを支持する与党連合は大敗し、過半数を失った。左派と極右が勢力を拡大した。現職大統領の与党が国民議会で過半数割れとなったのは、1997年以来のことである。2024年7月の国民議会(定数577)選挙では、1位が左翼連合で182(+33)議席、2位が与党連合で168(−82)議席、3位が極右の国民戦線(RN)で143(+55)議席となった。その結果、3つの勢力のいずれも過半数を獲得できず、「宙づり国会」となってしまった。
フランスは大統領制であるが、アメリカの大統領制とは異なり、第5共和制は、日本やイギリスのように首相がいる議院内閣制の要素も取り入れた。首相の任命権は大統領が持つが、首相は議会多数派から出ることになる。もし大統領が議会多数派の決定とは異なる政治家を首相に任命すれば、国会で不信任されるので、大統領は議会多数派から首相を選択えざるをえない。1986年3月〜1988年5月のミッテラン大統領(社会党)・シラク首相(保守の共和国連合)、1993年3月〜1997年6月のミッテラン大統領・バラデュール首相(共和国連合)・ジュペ首相(共和国連合)、1997年6月〜2002年5月のシラク大統領・ジョスパン首相(社会党)という組み合わせである。これを、保革共存(コアビタシオン)と呼んだ。
昨年の国民議会の選挙の結果生まれたのは、保革共存ではなく、左翼、中道、極右の3つの勢力が拮抗する状況である。この3政治勢力は不倶戴天の敵どうしであり、手を組むことはできない。つまり、多数派の形成は不可能なのである。そこで、マクロンは新首相の任命に苦労することになり、やっと9月5日にミシェル・バルニエを首相に任命したのである。しかし、12月4日の国民議会で、最大勢力である左翼連合が提出した内閣不信任案に、極右のRNも賛成したため、331票の賛成で可決され、バルニエ内閣は、第5共和制で最短の3ヶ月弱で退陣した。マクロンは、12月13日、後任に、与党連合の1角を占める中道政党「民主運動」のフランソワ・バイル党首を指名した。73歳のベテラン政治家である。バルニエ内閣は短命で終わり、バイル内閣も議会運営に失敗した。
ルコルニュ新首相は、中道右派の共和党の出身であるが、2017年の大統領選後にマクロンの政党に移籍した。ルコルニュ首相は、10月中旬までに予算案を議会に提出せねばならないが、野党との協議は難航が予想される。9月10日には、フランス全土で反政府デモが行われた。年金改革や緊縮政策に反対するためである。このような政治状況を反映して、欧州債券市場ではフランス国債が売られ、長期金利がイタリア国債を超える状況となっている。ポピュリズムが跋扈する世界で、日本もフランスも、少数与党という不安定な状態が続く。民主主義はどこに向かうのか。民主主義が欠陥の多い制度であること、また昨今のSNSの流行がそれをさらに悪化させていることを認識した上で、民主主義再生の道を模索したい。
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