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2020-04-07 00:00
ミルトン・フリードマンは間違っていた
古村 治彦
愛知大学国際問題研究所客員研究員
フリードマンの「株主優先理論(shareholder theory)」とは、「CEOは株主に雇用されている『被雇用者』であるので、CEOは株主の利益のために行動する義務がある」という考え方だ。私たちからすれば「何を当たり前のことを仰々しく理論などと言うのか、馬鹿らしい」ということになる。
もう一方に存在するのは「利害関係者優先理論(stakeholder theory)」である。これは企業、経営陣は株主の利益の最大化を最優先するのではなく、従業員、顧客、市民など、企業と関係を持つ人々の利器を最大化するべきだというものだ。慈善事業や社会的に意義のある活動にも資金を出すというようなことである。1970年代以降の市場原理主義のアメリカではでシェアホルダー理論が主流であったが、ここのところステイクホルダー理論が注目されるようになっている。
「利害関係者優先理論」が影響力を増しているということは、アメリカでそして経済の分野で何かが起きていることを示す。市場を崇拝してばかりでは、経済はうまくいかない。そもそも大企業になれば競争から逃れ独占を望み、それで労働者や消費者から搾取をして利益を最大化する。また、政府に影響力を行使して独占を守るような方策を採る。そういう批判が大きくなっている。「実際、巨大企業が自由市場の保護者であるという考えは極めて非現実的なものである。巨大企業とは我が国の市場経済という海の中に浮かぶ社会主義の島々ということになる」(『ジ・アトランティック』、2019年9月22日)ということだ。
経済学に対する不信感をたどると、「科学(science、因果関係から法則を見つける行為)だと威張っていたが、そんなことはできず、宗教のドグマのように市場至上の教理を押し付けてきた」し、また「経済学が自分たちの生活に脅威を与えてきた(リーマンショックからの経済不況など)」(同上)ということが挙げられる。経済学だけ、自然法則で人為よりも素晴らしいということにはならないということだ。そこの点を認めることが現実の市場経済が示唆する問題と旧来の経済学が提示する理論との間の乖離を理解する上での出発点ということになるだろう。
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