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2007-08-09 00:00
連載投稿(3)更なる一歩を踏み出す日本とインド
平林博
日本国際フォーラム参与・元インド大使
わが国は、長年、インドの経済社会発展のために協力してきた。インドは、わが国の円借款供与第一号の国であり、多くの発電所を始め、各所でインフラの整備や貧困撲滅や基礎教育などで貢献してきた。今や、インドは日本のODA(政府開発援助)の最大の供与相手となった。インド政府もインド人も、これに感謝している。しかし、最近日本の協力で完成したニューデリーの立派な地下鉄システムほど、インド人に大きなインパクトを与えたプロジェクトはない。
私も、その工事の進捗を追い、完成に立ち会った。これは単に立派な都市交通システムができたというにとどまらない。デリー地下鉄は、インド人の誇りとなり、日印協力の金字塔ともなった。工事は、日本のコンサルタントの指導の下、シュリーダラン氏という立派なデリー地下鉄社の社長兼技師長の指揮下に行われ、順調に進捗し、工期を短縮して完成した。工事の遅れが普通であるインドでは、見られない現象であり、インド人自身が驚いた。完成後は、地下鉄は日本流に清潔で、定刻どおりに運行されている。「乗客」が列車の屋根に乗ったインドの見慣れた風景は、ここでは見られない。無賃乗車がないのである。環境にやさしく交通渋滞の緩和にも貢献しているが、なによりも、インド人に公共道徳面で「意識改革」をもたらし、日本人のよさを再認識させた。目下、インドは、三大都市ムンバイ、デリー、コルカタをつなぐ鉄道貨物大動脈と沿線の工業地帯の建設を、日本に期待している。バンガロールなど少なからぬ都市が、同様の地下鉄システムを建設したいと考えている。
最近、インドがODA以上に期待しているのは、わが国企業のより積極的な投資である。インドは、1990年代初めの第一次ブーム、90年代中ごろの第二次ブームに次ぐ第三次ブームが起こっている。第二次ブームは、核実験のために失墜した。現在の第三次ブームは本物である。しかし、欧米はもとより、シンガポール、韓国などに比べてもわが国の企業は、慎重な態度できた。ようやく最近になり、わが国経済界も、積極姿勢を見せるようになった。インドが期待するのも、わが国の投資を通じた資金、技術、人的な貢献である。
インドには、増大しつつある消費者あるいは熟練労働力としての中間層のみならず、IT分野をはじめとする世界トップレベルの知的貢献力がある。学術・研究の分野で広い地平線が広がっている。安倍首相は、経済界の首脳たち250人の代表団を率いて間もなく訪印する。経済界も、日印ビジネス・パートナーシップを実践するときが来た。いずれ親日国インドにわが国の新幹線を走らせる位の意気込みで訪印することを期待したい。両国は、今や、昨年12月のマンモハン・シン首相と合意した「日印戦略的グローバル・パートナーシップ」を具体化するときである。(おわり)
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