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2007-06-19 00:00
再び「中国海軍が空母を保有する日」を考えよう
秋元一峰
海洋問題研究者、元海将補
本年4月24日の本欄に、中国の空母保有を危惧する拙文を投稿した。中国の空母保有については、お隣の国でありながら、何故か日本ではあまり取り上げられないが、海外では結構様々な意見や情報が飛び交っている。センセーショナルなものとしては、本年3月に、「中国は2010年に48,000トンの在来型空母を、また2020年に93,000トンの原子力空母を建造すると記した中国共産党の内部文書を入手した」とする韓国紙の報道などがあった。中国による空母建造に関する論調を大別すると、計画を着々と進めているとするものと、中国は空母を旧世代の兵器と見なしており建造はないとする反対の見方とがある。5月30日に、シンガポールのナンニャン工科大学にある国際問題研究所が掲示するWebマガジン「国際問題研究所コメンタリー」に、“A Drop in the Oceans”という面白い論説が載った(http://www.idss.edu.sg/publications/Perspective/RSIS0502007.pdf)。執筆者は同研究所の「軍事に係わる革命(RMA:Revolution in Military Affairs)」の研究者であり、内容は概略以下のようなものであった。
中国が技術的・経済的に空母を建造する能力を持っていることは疑いのない事実である。しかし、海軍について言えば、艦艇を建造することよりも、艦艇を運用することの方が遥かに厄介である。特に艦載機を運用する空母は、建造にも高度な技術が必要だが、運用するのはもっと大変だ。艦載機の離発着時には空母の甲板上はまさに修羅場と化す。一歩間違えば大事故を起こすような着陸と離陸が秒単位で繰り返される。そのような運用技量を習得するには、実機と飛行甲板を使った訓練の積み重ねが必要である。また、空母による作戦の遂行には様々な兵力が必要となる。米海軍の空母には、4個戦闘機隊に加えて、電子戦航空機隊、対潜航空機隊、救難回転翼航空機隊、早期警戒機隊、輸送機隊が組織されている。空母運用には莫大な経費が掛かる。中国海軍をしてこれらに取り組ませることになる「中国の空母」は、“Money-draining hole on the water”となるだろう。
「面白いからやらせておけ」ということか。ソ連軍の解体によって、ロシア海軍には殆ど任務に就くことのできなかったVSTOL空母や建造を投げ出されたままの状態のスキージャンプ空母が残された。それらの空母のうち、あるものはスクラップされ、あるものは観光用の展示物となり、あるものは様々な憶測を生み出す中国の港の係留物となっている(拙稿「中国海軍が空母と保有する日を考えよう」『百花斉放』2007年4月24日)。「中国の空母」も同じ道を辿るのであろうか?
確かに、冷戦に敗れたソ連は消滅した。朽ち果て残骸と化した夥しい数の原潜は、笑い話の標的にしかならなかった。中国はソ連と同じ道を辿るのであろうか?それは何年後でどのようにして起こるのか?その予測が確実性を伴って認識されない限り、「やらせておけば」とは言えない。核保有、先富による経済発展、人工衛星等々、目標を確実に達成してきた中国の底力については、過小評価するよりも過大評価した方がよい。それが安全保障であろう。引き続き訴えたい。中国が空母を保有する日について、日本はもっと関心を持つべきではないか。
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