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2016-05-28 00:00
加藤成一氏の「自衛のための核抑止力」必要論について
下山 犬彦
安全保障研究家(元特別職国家公務員)
加藤成一氏は、5月25日付けの本論壇「百花斉放」への投稿で、トランプ発言を受けての日本の総合安全保障政策のあり方に関し、「アメリカの『核の傘』に替わり得る日本独自の『自衛のための核抑止力』が必要である」と論じておられる。「議論の必要性」、という点に関しては、私も賛成であるが、その一方で議論の実行可能性に関しては、些か疑問が残るので、本稿にて問題を提起する。
アメリカの「核の傘」無き後の日本の核武装は、果たして実効性があるだろうか。核兵器が抑止力として機能するには、それを保有するだけでは不十分であり、「核弾頭の保有」に加え、「敵国政府中枢部に核を投射する手段」及び「それが確実に作動する保証」が必要になる。投射手段は主にミサイル(巡行・弾道)と航空機であるが、科学技術の発展が著しい今日では、一番対処困難とされる弾道ミサイルですら撃墜されるようになった。勿論敵の防空能力を遥かに超える弾頭と投射手段を同時に保有すれば、問題は解決できるであろう。しかしながら、ご一考頂きたい。ミサイルにしても航空機にしても、そもそもの弾頭にしても、実際に投射してみなければ、その確実性というものは保証できないのである。
日本にそのような実験をする場は存在しないし、実験したとなれば、国民の反発は極めて大きいものとなるであろう。さらに、その技術を開発するまでの時間を、我が国を敵視する諸国が待ってくれるであろうか。武力に加え三戦(法律、世論、心理戦)を駆使し、徹底的な妨害を図るであろう。管理の困難な現状もある。核弾頭は、言うまでもなく放射性物質である。維持管理には慎重な扱い及び莫大なコストが必要であり、更に国際機関の管理を必要とする。
加えて、日本という国家の現状もある。戦闘手段としての核の唯一の被爆国である我が国は、核不拡散の旗手ともなっている国家である。その我が国が、核不拡散を放棄し、核兵器を保有するとなると、世界的な核不拡散体制は一挙に崩壊しかねない。日本に複雑な感情を有する韓国を始め、不安定要素を抱える国ぐにが一斉に核兵器を保有しようとするようになり、最悪(十分に想定可能である)の場合には、ISILのようなテロ組織にまで核兵器が流出することが懸念される。
リアリズムを追及した結果、私の導き出した結論は、「日本の核武装は、間違いなく非現実的だ」である。現状を踏まえて考えると、仮にアメリカで歴代最愚の人物が大統領に当選したとしても、それを根拠として日本が核武装をする選択肢はない。外交努力を主軸に据えて、覇権主義に走る近隣国家を牽制するのが、今後とも日本のあるべき姿であろう。
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