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2014-08-08 00:00
中国人におけるロジック
中兼 和津次
東京大学名誉教授
以前、かつて日中覚書協定の交渉に立ち会った友人から次のような話を聞いたことがある。日中国交回復前、しかも文化大革命の最中で、中国が日本「軍国主義批判」を猛烈に展開していた頃のことである。田川誠一、古井喜実代議士らとともに「軍国主義」を巡って中国側とやりあったとき、日本側が「軍国主義なるものは平和な日本に復活していない」といくら説明しても、中国側は納得せず、こう切り出してきたという。
つまり、「軍国主義とは何か、定義から始めるのはやめましょう。まず事実を確認していきましょう」といい、「右翼の三島由紀夫が切腹しましたね?(それに対して確かにそうです、と日本側が答えると)日露戦争を扱った映画の中で、ある男は舞台に上がり、スクリーンを日本刀で切り裂きましたね?」などと、次から次へ「右翼の活動」や「右翼的ムード」が日本で最近見られることの「事実」を取り上げ、日本側に確認を迫って来たそうである。そして最後に、「だから日本に軍国主義が復活しましたね?」と日本側に「証明」しようとしたという。中国でよくいう「実事求是」(事実の中から真理を求める)方式を実践したつもりなのだろう。しかし、何のことはない、定義の問題に戻ってきてしまったではないか。この話を聞いて、中国人におけるロジックとは何なのか、考えさせられた。
もちろん、中国人は元来「非論理的」だというのではない。また上記のような日中交渉において、中国側担当者は「本音と建て前」を分けざるをえなかったことも分かる。しかし、誰が聞いても可笑しな論理を正規の交渉の場で堂々と展開してくることに、そして法とは1種のロジックであるだけに、中国における法意識、したがって法治の一端が、このエピソードにはしなくも露呈されているような気がする。
あれから40年以上も経つのに、またぞろ中国で日本軍国主義批判が展開されている。軍国主義の確立した定義はないような気がするが、常識的に「全ての資源を戦争のために動員するような独裁体制や思想」と定義しておくと、戦前期の日本は確かに軍国主義体制だった。しかし民主主義の日本で軍国主義は相容れないし、民主主義を捨てない以上、将来も軍国化するはずもない。急速に軍備を拡大し、日本の数倍の軍備予算を持ち、かつ一党独裁の中国の方が、むしろわれわれのいう軍国主義に近い。ある中国の研究者に「日本のどこに軍国主義が復活するというのか?」と聞くと、「だって昔あったではないか」という答えが返って来た。
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