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2014-07-07 00:00
オバマのジレンマ/軍事顧問団の派遣
川上 高司
拓殖大学教授
オバマ大統領は、イラクの不穏な情勢に対して300人の軍事顧問団を派遣すると発表した。もっともオバマ政権自体は軍事介入には否定的である。空爆についてもディンプシー統合参謀本部議長は「難しい」と言い切る。アメリカは何をターゲットにするのか、というISISの情報がほとんどないのである。目標が定まらない空爆は地元の反感を買い、結局過激派支持を増やすだけである。しかも北部はクルド人自治区であり油田もある。政治的混乱を招く可能性がある。シリア空爆では勢いの強かったリベラル・ホークたちも、今回のイラクでは「軍事介入が必要なほどの人道危機はない」と関心がない。
シリア空爆の是非が問われたとき以上に、アメリカ国内での反発は強い。直近の世論調査ではイラク派兵に賛成は16%、反対は74%である。軍事介入に賛成するマケイン議員を支持するのは28%、派兵を否定するオバマ大統領を支持するのは54%と、国民は「二度とイラクに戻りたくない」と考えている。今回はオバマ大統領の方針は民意に添っているといえよう。
退役軍人たちもいち早く派兵反対に立ち上がった。派兵反対グループを組織して派兵反対を訴えるある陸軍退役軍人は「アメリカこそがイラクでの問題の元凶となっている」と厳しく批判している。戦争後遺症に苦しむ退役軍人の父親は「トラウマに苦しむこどもたちに何もしてやれない。イラクのことより苦しむ退役軍人を救済するシステムの確立が先だ」と訴える。当時者たちのイラク戦争はまだ終わらないのである。
だからといって、このままISISが勢力を伸ばせば、いずれシーア派イランとの衝突は避けられない。レバノン、シリア、イラク、イランと続くシーア派回廊に浸食しはじめているスンニ派過激派との衝突は熾烈なものになるに違いない。それは周辺国をも巻き込んで中東全体にも及ぶ可能性がある。スンニ派の大国サウジアラビアとシーア派の大国であるイランが中心となってこの地域の安定に尽力することが必要なのだろう。アメリカはあくまでその努力を支援する役割にとどまるべきである。
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