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2014-07-01 00:00
韓国外相の曲解に満ちた対日批判
杉浦 正章
政治評論家
このような偏狭な考えで外交をリードされては韓国民も迷惑だろう。外相・尹炳世による6月30日の国会答弁は、7月1日に北京で開催される日朝外務省局長級協議について露骨な批判を行った。「韓米両国は懸念しつつ見守っている」と米国まで引き合いに出したが、事実に反する。米国は拉致問題での日朝接触を了解しており、中国ですら期待を表明した。日本政府は拉致問題の進展を突破口に、将来は核・ミサイルでの6カ国協議の再開に発展させる長期展望を抱いており、尹はこれが分かっていない。日朝協議に加えて、3日からの中国国家主席・習近平訪韓など極東外交は静から動へとめまぐるしい展開を見せ始める。官房長官・菅義偉が30日の記者会見で尹発言について「全く当たらない」と否定したが、その通りだ。尹の発言内容は「拉致問題は安倍政権が優先順位を置く問題だが、事態が憂慮する方向に展開する可能性を排除しない」と拉致問題での日朝合意に懸念を表明。核・ミサイル問題についても「今後韓米日の協調に影響を与える側面があり、韓米両国は懸念しつつ見守っている」と言明した。加えて「日本の制裁解除のやり方次第で、韓米日の協調に相当な影響が及ぶ」と批判した。この発言は曲解と情報不足と反日感情にあふれたものである。
まず制裁解除に関して言えば、日本は国際社会が課している制裁とは別に独自の制裁を行っている。 北の拉致調査開始後に解除するのは、(1)人的往来の規制、(2)北朝鮮への現金持ち出しなどに関する規制、(3)人道目的の北朝鮮籍船舶の日本への入港禁止措置、の3点であり、韓国が口を出す性格のものでもない。さらに「韓米両国が懸念」というが、米国は国務省副報道官ハーフが「日本とは緊密に調整している。日本にとって(拉致問題が)非常に重要な問題であることは承知している」と述べるとともに、「日米で核・ミサイル問題解決に向けた足並みが乱れる懸念はない」と強調している。一方で中国外務省報道官の洪磊は30日の記者会見で、日朝政府間協議について「日朝両国の関係改善や、地域の平和と安定につながることを期待する」と期待感を表明している。
いずれも尹とは真逆の発言であり、言ってみれば尹発言だけが孤立しているのである。米国も中国も尹より大きなところを見ている。それは完全な行き詰まりを見せているミサイル・核問題をめぐる6カ国協議の再開である。北朝鮮の日本への接近をテコに再開に持ち込められれば極東の緊張緩和は大きく前進するのだ。一方、北朝鮮がスカッドミサイルを日本海に向けて発射した問題についても、日本ではもっぱら日朝会談に向けてのけん制と受け取られているが、これには北と中国の関係悪化に関する視点が欠けている。北がけん制するとすれば、3日に予定されている習近平訪韓であろう。習は歴代国家主席と異なり、北朝鮮訪問をせずに韓国を訪問するのである。張成沢の処刑を断行した金正恩への習の怒りの強さを物語るものであろう。
日朝会談では北朝鮮側が、日本人拉致被害者の再調査のための特別調査委員会の設置について説明。日本側は即答せず帰国後、特別委の権限や調査の実効性を見きわめる。アジア大洋州局長・伊原純一は2日に首相・安倍晋三に会談内容を報告、安倍は北の提示が妥当なものと判断すれば制裁の一部解除に踏み切る。会談の焦点は、北が拉致被害者のほか拉致の疑いが残る「特定失踪者」や北朝鮮への帰還事業で渡航した日本人妻らに関して、既に分かっている被害者の具体名をあげて帰国を認めるかどうかであろう。北は最高裁が売却中断をしている朝鮮総連中央本部ビルの継続使用問題や万景峰号の寄港許可などを要求するものとみられる。また最近北は日本企業誘致を求めてきていると言われているが、日本政府は核・ミサイル問題が解決しない限り、応ずる構えにない。極東情勢は日朝接近が具体化し、安倍訪朝にまで発展するかどうか、習近平が訪韓で対日歴史認識問題で共闘姿勢をあらわにするかどうか、など極めて重要な局面を迎えることになる。
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