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2014-02-22 00:00
イラク、シリアで猛威を振るうアルカイーダ系組織
川上 高司
拓殖大学教授
イラクのマリキ首相はついに国際社会へ助けを求めた。イラク西部のアンバル地方をアルカイーダ系過激派組織が制圧、その勢力をじわじわと拡大しつつある。2月15日にはバグダッドでもシーア派居住地に近いところで自爆テロが続発、北部の街でも爆弾テロが起こっている。もはや犠牲者の数のカウントは意味がないほどに情勢は悪化しつつある。この国家の危機にマリキ首相は「国際社会が黙って見ているだけならば、闘いは続き、やがてテロリストの王国が生まれる」と世界に向かって悲痛な訴えをした。国連のバン事務総長はマリキ首相に「アンバル地方のスンニ派指導者たちと政治的に協力して対処するように」とのアドバイスを送ったが、マリキ首相は協力には消極的である。
イラクで猛威を振るっている過激派組織はISISまたはISILという。Islamic State in Iraq and Syria またはIslamic State in Iraq and the Levant の頭文字をとったものである。イラクとシリアの国境にまたがってこの地域に厳格なスンニ派国家を樹立しようという目的を持ったグループである。シリアでも勢力を伸ばし、おなじアルカイーダ系グループのアル・ヌスラを凌駕して、いまではシリア内戦の主流となっている。イラクではシーア派やシーア派政権寄りのスンニ派を標的として冷酷な攻撃を続けている。
このイラクとシリアの国境地域にスンニ派国家が樹立されれば、シーア派であるイラン、シリア、イラクにとっては大きな脅威となる。また、アルカイーダ系組織の支配する国家となれば、アメリカにとってもとうてい認めることはできない。同じスンニ派であっても、かれらとは一線を画するクルド人自治区やトルコにとっても脅威となる。ロシアにとってもイスラム過激派国家はとうてい許容できない。イラクの危機は国際社会全体の問題となりつつある。
アメリカは、イラク政府に対して武器などの支援はしても、派兵に踏み切る意志はなく、情勢を静観している。だが、このISISの動きはシリア和平にも影響を与える。イラクからISISを追放すれば、かれらはシリアへと押し戻されて、シリアの内戦が激化する懸念があるからだ。イラク問題もシリア内戦も単独では解決しないということだろう。だが、希望もある。アメリカは核問題をめぐってイランと交渉中である。周辺国の協力を得られる環境は整いつつある。オバマ大統領の中東政策は難しい舵取りを迫られている。イラク戦争の戦後はまだ終わっていない、ということを改めて思い知らされる。
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