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2013-12-23 00:00
(連載)2013年の国際政治を回顧する(3)
石川 薫
日本国際フォーラム研究本部長
こうした国際環境にあって、日本は既述のとおり機動的外交を展開したが、そこで観察されたのは「日本らしい日本」の外交」と「日本を念頭に置いた第三国」の外交であった。例えば、TICAD Vにおいてはアフリカ諸国を信頼する「水平目線」での開発協力を推進し、一部欧米の「垂直目線」のODAとの違いを改めて際立たせた。ちなみに2年前の「エジプトの春」での総選挙について、当時のエジプト政府が他の欧米諸国の申し入れをすべて断り、日本に対してのみ選挙協力を要請したのは、受益国側にまずは敬意を表する日本の開発支援哲学を信頼したからであった。
また、安倍総理と立て続けに4回会ったプーチン大統領が12月に入り、クレムリンでの年次教書演説にて「極東やシベリアの発展は21世紀全般にわたる国家の優先課題だ」と述べたのは、中国からの人口圧力と経済浸透に対抗する切実な必要に迫られてのこととは言え、安倍総理の“Japan is back” 発言に示された「カムバックした日本」の存在も念頭にあったと考えられる。わが国の対ロ外交がその毅然とした基本姿勢を堅持しつつ、首脳同士の信頼関係を構築してきた結果の一つの顕れがここに見られる。
ただ、あえて付言すれば、日本外交を振り返る中で気づいたことが二点ほどある。それは第一に、外交は、多国間外交はもとより、二国間外交といえども決して「相対」という2次元のものではないという事実である。特に瞬時に情報が地球上を駆け巡る今日の世界では、常に「グローバル・ステージ」の観客がいることを忘れてはならず、そういう観客たちが良しにつけ悪しきにつけものごとの正邪の判定について国際世論の流れを作ることが多い。例えば、国連等の場での今日の最優先課題の一つが「紛争下の女性への暴力」であることをかりそめにも失念して、従軍慰安婦問題について特定国に対する「相対」のコンテキストで発言すれば、国際世論、なかんずくオバマ大統領の最側近であるミシェル夫人やスーザン・ライス大統領補佐官などの「4人の女性」がどのように反応するかは明白である。ましてや特定の国を念頭になされたとみられる「侵略の定義は定まっていない」といった発言は、第二次世界大戦ぼっ発以降の「正義」の判断基準を全面的に書き換えることを要求するものとすら受け取られかねない。戦争に「勝つ、負ける」とは、そういうことである。賢明な大状況判断と、それに基づくリカバリーショットが求められるゆえんである。
また、第二に、「共産主義者に対峠して、自由と民主主義という旗さえ掲げていれば、友達は増える」という認識が仮に東京のどこかにあるとすれば、それは時代錯誤に近い。「共産主義という幽霊」がヨーロッパはもとよりアメリカにも徘徊しなくなって久しい。世界の人口の半分は「ベルリンの壁」のことさえ知らない世代から成る。米国やヨーロッパという国際世論形成の主舞台を見れば、正邪の判断の分かれ目は、イデオロギーよりもっと複雑な「今日的なもの」にあり、また判断のカギを握るのはオールド・エスタブリッシュメントの人々でもない。日本からのシュルードな発信が求められる所以と余地がここにもある。最後に一言しておきたいが、本稿は、石川の個人的見解であって、組織としての日本国際フォーラムの見解を代表するものではない。
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