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2013-12-22 00:00
(連載)2013年の国際政治を回顧する(2)
石川 薫
日本国際フォーラム研究本部長
ここで改めて米国についてみると、事態はかなり深刻である。オバマ大統領は、国際政治において時に必要となる果断な決断を行わず、「戦争をするか、しないか」と言う決断さえ議会に丸投げし、さらに「米国は世界の警察官ではない」とまで公言した。これが、マンデラ元大統領追悼式典でスマホの自分撮りに興じたことが物語るような、オバマ大統領の個人的資質によるものなのか、あるいは米国という国にモンロー主義への先祖返りの誘惑が忍び寄っているからなのか、議論は分かれうる。しかし、世界のリーダーとみなされている米国の大統領の言葉は重い。オバマ大統領が国際秩序維持の役割を放棄したとみなした国は、自国の野心のために既存秩序を変えようと行動し、あるいはそうしないまでも自国の影響力を極大化しようと動きはじめた。
このような米国の行動が東アジアの安全保障にもたらす影響も大きい。中国という新興の経済・軍事大国の台頭が力学の変化をもたらしている中で、シリア問題をめぐり米国がさらに迷走すれば、「尖閣諸島は、米国の対日防衛義務を謳った日米安保条約第5条の対象である」という米国の発言に対して、中国が高をくくる事態を招く可能性もある。尖閣諸島の領海への中国海監船の度重なる不法侵入や防空識別圏の設定は、中国の対外膨張政策の一環として理解すべきであり、こうしたなかで米国、ASEAN、韓国が自国民間航空機の中国への航路届出を容認したことは、わが国の正当な領土の実効支配への中国の挑戦が一歩歩を進めた可能性がある。これに対しては、わが国として一層シュルードな外交を展開しなければならない。まずは、日・ASEAN特別首脳会議の開催は時宜を得たカウンターパンチであった。
韓国の朴政権は、日米韓3か国が共同で共産主義の脅威に対峠してきたことを忘れたかのごとく、合理的とも、理性的とも位置付けえない対日外交に固執し続けた。親中路線に急傾斜したのち、中国の防空識別圏が韓国領域を覆うに及んで周章狼狽したのは、国際秩序形成という修羅場についての同政権の認識の甘さを垣間見せた。
他方で、北朝鮮では、身内を残忍な方法で公開処刑した金正恩第一書記が「先軍主義」に回帰・傾斜しつつあるかに見られ、内政の動向はその予見可能性をいっそう低めつつある。シリアにおける米国の迷走をみて、北朝鮮がその核開発について米国を「なめてかかる」ことも、十分に想定される事態となった。ただ、金正恩第一書記が軍を掌握しているのか、軍が同第一書記を利用しているのかについては、なお断定は困難であり、今後観察を続ける必要がある。経済的に開放政策を続けるか否かについても、開城工業団地問題で相矛盾するメッセージが発せられているように、当面事態の推移を見守る必要がある。(つづく)
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