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2013-12-05 00:00
朝日はやがて3度目の“変節”をするだろう
杉浦 正章
政治評論家
まるで「あら何ともなや昨日は過ぎて河豚汁(ふぐとじる)」だ。特定秘密法案は今国会成立が確定的になるが、朝日新聞が指摘しているように、日本が警察国家となって暗黒政治が行われるかというと、全くそれを感じない。一記者として50年日本や米国の政治をウオッチしてきたが、この程度の法案で全体主義国家になるなどとは、つゆほども思わない。米国や西欧諸国のような普通の国になるだけだ。朝日は半世紀の間に今度で3度目の「警鐘乱打」だが、その鐘はひびが入っている。60年安保と92年のPKO(国連平和維持活動)法案に散々反対しておきながら、その後同紙は“変節”してしまっている。「河豚を食べて見たらうまかった」というような論調を臆面もなく展開しているのだ。扇動された大衆は置いてけぼりを食らって、歯ぎしりしても遅い。12月5日付の社説でも、安保やPKOの時と全く同じトーンで反対論を展開している。「今国会での成立をあきらめよ」と言っているのだが、もう同社の社説はマンネリ化した。一つ覚えのように反対論だ。安保、PKOの時を上回る執拗さで空論を展開している。あえて空論というのは、やがては“変節”するからだ。
いみじくも4日の参院特別委で首相・安倍晋三が指摘したことに尽きる。安倍は「PKO法案の時の反対は、何であったのかなあと思う」と述べたのだ。明らかに朝日の変節を指している。当時朝日は自衛隊の海外派遣に道を開くとして猛反対、今回同様に「いつか来た道」とデマを煽った。今回も「アメリカの秘密情報のために市民が逮捕される」といった愚かな記事を展開している。社説では「良識の府はどこに行ってしまったのか。この名前を返上してもらうしかない」と、自民党の5日の参院本会議採決方針に噛みついている。当時も「数の力で押し切る政治」など、今と全く同じ論調を展開している。まるで「狼少年」そのものだが、なぜ「狼少年か」という根拠を示そう。PKO法案にあれほど反対した朝日は、その後なんと“賛成”どころか、推進に回っているのだ。民主党政権時にスーダンへのPKO派遣が浮かび上がったが、費用がかかりすぎるということで中止になった。これに対して朝日は「スーダンPKO―目立たぬからやめるとは」と題する社説を掲げて、中止に猛反対した。
「まず考えるべきは、スーダンが日本の役に立つかどうかではない。日本がスーダンの役に立てるかどうかだろう」とまでかっこうよく言い切った。「よく言うよ」と思ったものだ。60年安保の時はもっとひどい。朝日は、60年の第一次安保闘争においては安保条約の改定反対、岸内閣退陣の論陣を張って、学生運動を煽った。ところが、6月15日に安保反対デモ隊と警官隊の衝突で東大女子学生・樺美智子が死亡すると、一転した。これまで何が何でも反対の論陣を張った論説主幹の笠信太郎らが主導して、「暴力を排し議会主義を守れ」という7社共同宣言を発するに至ったのだ。扇動して人命が失われたことなどへの責任には全く口をつぐんで、言及しない。純真な側面もあった全学連は、2階に上がってはしごを外されたのだ。 今回も同社は、過去2回と全く同じ方針の下で、「ないこと、ないこと」を煽っている。「あること」ならまだよいが、「飲み屋の話で市民が逮捕される」など、三流タブロイド紙でも書かないような記事を満載している。
社説では「秘密保護法案 石破発言で本質あらわ」「秘密保護法案 裁きを免れる秘密」「秘密保護法案 欠陥法案は返品を」「特定秘密保護法案 民意おそれぬ力の採決」「秘密保護法案 翼賛野党の情けなさ」と連日のように次から次にパンチを繰り出しているが、今度は3度目の正直だ。そのうちに「スーダンが日本の役に立つかどうかではない」の論法と同じで、「秘密保護法が国民の役に立つかどうかではない。国民が秘密保護法の役に立つかどうかだ」と言いかねない。それこそ全体主義の発想だが、過去の変節が、未来の変節を予言している。哀れなのは、朝日に扇動された国会周辺を取り巻く「爺さん婆さんやおかみさん」だちだ。記事を本気にして集まるのだろうが、学生運動は全く盛りあがらず、若者はそっぽを向いている。こんな「闘争」も珍しい。日教組教育を反面教師として、若者は国政へのよい判断力が養われたのかも知れない。ノーベル賞学者の2人が反対しているのが目立つが、世事に疎い学者の姿をいたずらに露呈させて、失望させることこの上ない。こうして自公両党は、5日にも参院本会議で可決、成立を図る構えである。躊躇する必要は無い。4日発足した国家安全保障会議(NSC)に不可欠であり粛々と成立を図り、将来の反対派の“変節”を嘲笑すればよい。河豚はちゃんと料理をすれば「なんともなや」となる。
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