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2013-11-07 00:00
虎の尾を踏んだオバマ
川上 高司
拓殖大学教授
アメリカ国家安全保障局(NSA)の機密情報を暴露してロシアに亡命したエドワード・スノーデンは、10月24日、35カ国の大統領や首相の通信を盗聴していたとリークした。盗聴の対象となっていたのは、ロシア、イラン、中国の他にもブラジルやドイツ、フランスの大統領や首相などのアメリカの同盟国だった。そのため同盟国からは同盟国を盗聴するのかという怒りがオバマ大統領に向けられている。ブラジル大統領は9月に開かれた国連総会の演説でアメリカの盗聴を厳しく非難したが、ドイツのメルケル首相の怒りも深いようである。
ドイツ・スピーゲル誌電子版(10月27日付)では、NSAがドイツでどのように盗聴していたのかを詳細にレポートしている。それによれば、ドイツでの盗聴の拠点はベルリンにあるアメリカ大使館とフランクフルトの領事館だ。大使館はブランデンブルク門のすぐ脇にあり連邦政府の建物にも近い、最高の場所である。アメリカは2008年に立派な建物を建築して入居を始めたのだが、どうやら建物内で盗聴活動が行われていると、同誌は独自の調査と分析で結論づけている。さらに、NSAの中でもエリート部隊であるSpecial Collection Service (SCS)がドイツでは活動していた。最新の装備と最強のスパイがドイツでは2002年からつい最近まで暗躍していたことになる。
メルケル首相は政治的な打ち合わせなどはすべて該当の携帯電話で行っていたので、メルケル首相の動向は筒抜けだったことになる。メルケル首相は以前からなかば冗談で「携帯電話が盗聴されている」と周囲にもらしていたが、それは中国やロシアが盗聴しているのだと思っていたという。それが実は盗聴していたのはアメリカと知って、その受けた衝撃は並みたいていではなかったようである。
メルケル首相はオバマ大統領へ抗議の電話をかけたが、オバマ大統領は盗聴について知らなかったと言いつつ、丁寧に謝罪したという。だが両国の信頼関係にはいったひびはそう簡単には修復できない。ヨーロッパでの存在感を強めているドイツを怒らせたため、アメリカとヨーロッパの外交関係がぎくしゃくしかねない。フランスのオランド大統領も不信感を顕わにしている。同盟国であるヨーロッパの信頼を取り戻す道は険しい。ドイツなどとは反対に、やはり盗聴の対象となっていたロシアは、「盗聴ごときでアメリカとロシアの関係にひびがはいることはない」とラブロフ外相がコメントして淡々としている。オバマ大統領は世界からの非難に対処しながら、ますます重要となる情報戦争を闘わねばならない試練の時を迎えている。
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