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2013-07-19 00:00
アメリカと中国が鍵を握るアフガニスタンの今後
川上 高司
拓殖大学教授
2009年6月30日、アフガニスタンで米陸軍のボー・バーガール兵が行方不明になった。その後彼はタリバンの捕虜となっていることが判明し、現在も拘束されている。アメリカは、アメリカがグアンタナモ収容所に拘束しているアフガニスタン人5名とバーガール兵を交換する交渉をタリバンと開始する。タリバンは6月18日にカタールにオフィスを開設し、交渉の窓口としている。この捕虜交換の話はタリバンとアメリカが今後和平に向けての直接対話の第1ステップとなる可能性があり、期待が込められている。
この交渉が進んだのは、ケリー国務長官とパキスタンのカヤニ陸軍参謀長との極秘会談の積み重ねの結果である。6月20日、ブリュッセルでケリー国務長官とカヤニ参謀長とカルザイ大統領の3者会談が開かれ、タリバンとの交渉や2014年後のアフガニスタンについての話合いがもたれた。タリバンに対してはパキスタン軍が強い影響力を持っていることは周知の事実であり、タリバンを動かしたいのなら、まずパキスタンに働きかけなければならない。パキスタンがタリバンとアメリカの和平に積極的で、アフガニスタンの安定に力を入れるようになったのは、パキスタン国内でテロが頻発するようになったことや、米軍撤退後にアフガニスタンからの難民がパキスタンに押し寄せる可能性が高いことがある。かつてソ連が侵攻したとき大勢の難民の中にタリバンが混ざって国境を越えてきた。彼らはパキスタン北西部地帯に根付いたが、この地域の安定はパキスタンの安定には欠かせない。30日にはパキスタンの3箇所でテロがあり、50人以上が犠牲になったが、そのうち2箇所は北西部地帯にある。
インドや中国もアフガニスタンの安定には関心が高い。インドは100億ドルを超える金額を鉄道やダムなどのアフガニスタンのインフラ整備に投資してきている。アフガニスタンが内戦になれば投資は無駄になってしまうし、何よりもパキスタンとの国境問題を抱えるカシミールにイスラム過激派が流れこんでくるのは避けたい。そこでインドは、中国とパキスタンとの親密な関係に着目し、パキスタンにプレッシャーをかけるよう中国に働きかけ、協力体制を確立することを狙っている。中国もアフガニスタンには銅鉱山や石油などの資源開発に投資をしており、アフガニスタンの安定を願っている。中国はインドと異なりアフガニスタンとは国境を接している。しかもその国境はウイグル自治区に近い。さらにアフガニスタンで内戦が始まれば、イスラム過激派がカラコルム・ハイウエイを経由して中国に流入するという最悪の事態も考えられる。6月23日中国との国境付近でおきたナンガルパルバットでの登山団を狙ったテロは、その事態を予見させる。
米軍がアフガニスタンから撤退を完了するまで2年を切った。かつてソビエトがアフガニスタンから撤退した後悲惨な内戦に陥った過去を踏まえて、関係諸国はアフガニスタンの安定に動き出した。アフガニスタンの内戦が及ぼす影響は、当時とは比べものにならないほど大きい。アフガニスタン安定の鍵を握るのはパキスタンである。そしてパキスタンに強い影響力を持っているのが中国とアメリカである。米中がどこまで協力できるかが、アフガニスタンの未来を大きく左右する。外交的な手段を駆使して大国として行動してもらいたい。
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