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2013-06-29 00:00
高まる日本への関心に応えられない日本語の普及教育体制
二宮 剛
大学非常勤講師
先月末「きゃりーぱみゅぱみゅ」による世界ツアーが大成功のうちに終了した。海外の各種メディアの反応もすこぶる良好で、いわゆる「きゃりぱみゅファン」が世界中で増大している。AKB48や初音ミクによる数々の海外公演やその成功とも重なり、今や世界では「かわいい」「クール」のイメージに結びついた日本への関心が大きく高まっている。この機運を、なんとか日本の広報文化外交に活かすことは出来ないかと思うが、現状は悩ましい。
広報文化外交に関する予算額は近年、削減傾向にある。昨年の事業仕分けでは、多くの広報文化関連予算が、その効果と具体的な成果が分かりにくいなどとして、削減ないし削減猶予の対象となった。「きゃりぱみゅファン」の世界的増大はまた、世界中の若者による日本語学習への高い興味と関心へつながっている。しかし、日本の広報文化外交(中でも語学教育関係)は、彼らの期待に十分に応えているのだろうか。国際交流基金による『海外の日本語教育の現状』(2011年刊行)調査によれば、世界における日本語学習者は、前回調査時(2006年)の298万人から、今回調査時(2009年)の365万人へ、教師数は44,321人から、49,803人へ増加している。「順調ではないか」と思うなかれ。例えばお隣の中国の例では、正確な数値は分からないものの、2009年の世界全体における中国語学習者総数が3000万人から4000万人と言われている。日本とは桁が違う。
各国における主要な語学関連機関の職員数や拠点数等に関するある調査データは更に興味深い。2006年のデータで若干古いが、第1位はフランスの「アリアンス・フランセーズ」で、総職員12,000人、世界に606ヶ所の拠点を有する。第2位はイギリスの「ブリティッシュ・カンンシル」、第3位はドイツの「ゲーテ・インスティトゥート」で、それぞれの総職員数は7,500人、2,890人。拠点数は193ヶ所、147ヶ所である。他方、同調査で日本の代表的語学関連機関とされる国際交流基金は、総職員230人、拠点はわずか11ヶ所である。これでは、世界で急増する日本語熱に十分対応出来ないことは明らかだ。
教育の現場からも多くの問題が指摘されている。今年3月から始まった「海外における日本語の普及促進に関する有識者懇談会」(各会合の概要については「外務省」HPより閲覧可能である)では、「教師数の不足が海外での日本語普及の足かせの一つ」や「教材の不足」「教員研修制度の不足」などが大きな課題として挙げられている。日本語学習者は、将来の日本にとってのかけがいのない財産である。換言すれば、彼らは親日派・知日派の卵であり、また将来の日本外交の潜在的なサポーターであると思う。「きゃりーぱみゅぱみゅ」らによって喚起された日本への興味・関心や日本語学習への熱意をがっちりと受け止め、その期待に継続的に応えていくためには、包括的で戦略的な日本語普及体制作りが求められる。
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