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2012-09-08 00:00
(連載)あまりにも「2国間関係」でのみ捉えていないか(2)
高橋 敏哉
PhD Candidate (National Security College, ANU)(新潟大学講師)
この地に来て以来、北東アジアの国際安全保障問題として尖閣問題、竹島問題に火がつき、オーストラリアでも高い関心を持って報道された。また、日本の新しい防衛白書への中国の感情的な反発もあった。なお、このテーマについては、East Asia Forumより依頼があり、webで発信された拙稿があるので、ご参考までに(http://www.eastasiaforum.org/2012/08/21/a-new-trend-in-japans-defence-white-paper/ )。このような安全保障問題の解決を後押しするのは「国際世論」ということになろうが、重要な安全保障上のパートナーであるオーストラリアの首都での日本の存在感の薄さを考えると、日本の「国際世論」への働きかけ、その背景にあるべき日本の「国力」の低下という事実に大変な危機感を覚える。
残念ながら、尖閣、竹島問題に関し、オーストラリアの世論は必ずしも日本の立場を支持しているわけではなく、至って中立的である。詳細がわからないということもあるであろうが、中国もオーストラリアにとって重要なパートナーであり、経済的繁栄の鍵として理解されている部分がある。中国への警戒感は、中国の国営企業によるオーストラリアへの投資、南シナ海問題などで、世論レベルでは緩やかに拡がっている感じはあるが、政府の立場は明確であり、中国は重要なパートナーであるという姿勢で変わりはない。韓国についても、同じミドルパワーのパートナーとしての大きな期待がある。身近に多い中国人、韓国人から影響を受けつつある一般の人たちもあり、歴史問題などにつき日本について否定的意見をぶつけられたという日本人の話も聞く。
中国、韓国に比べ際立つ日本の存在感の薄さ(車を除いて!)が、将来的にはオーストラリアの世論にも影響し、もし他国でも同じような状況が進めば、日本の国益に関する「国際世論」の形成にも大きく影響を与えていく可能性は否定できないと思われる。このような「国際世論」の形成力も、ジョセフ・ナイのいうソフト・パワー、スマート・パワーの一例であろう。
尖閣、竹島問題、中国の海軍力拡大は日本にとって重要な2国間問題である。しかしながら、このような問題を日本国内の報道、世論はあまりに「2国間関係」でのみ捉えてしまい、中国、韓国との競争は「多国間関係」や「グローバル社会」の中にも存在し、そこが実は主戦場であることを忘れているのではないか、その点がまさに気になるのである。近隣諸国との関係を越え、日本が国家として競争すべきフィールドは、今国内で一般に理解されているよりはるかに広いのではなかろうか。この観点からの総合的な国力アップが緊急の課題と思われる。この点、また次の機会に詳しく述べたい。(おわり)
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