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2011-06-29 00:00
(連載)「原発継続しなければコスト数兆円」という議論について(1)
西村 六善
元地球環境問題担当大使
国内の有力研究所は一斉にこういう議論をしている。「原発の限界化に伴い、火力や自然エネルギーの導入で、電力料金は急上昇し、国民負担は膨大になる」、「産業界は、電力不足で海外立地を余儀なくされる」と。しか、原発を続けたら、どれ程の国民負担になるかは議論されていない。ここにこの議論の欺瞞性がある。欺瞞性でないとしたら、中立性に疑問符がつく。もっと重要な視点が、二つ欠落している。
第一は、「経済主体は価格変化で行動を変える」という経済の基本に考慮を払っていない点だ。家計であれ、企業であれ、電力価格が上がれば、それを回避する行動をとる。節約もするし、投資パターンも変える。イノベーションがあらゆる段階で始まり、経済は成長する。その過程で、高価な電力は少ししか使用されなくなる。それを勘案しないで「何兆円の負担だ」というような話は、経済の現実感覚から遊離していて、嘘っぽい。
第二に、日本はもともと他の先進国に比べ、電力料金が高い。諸外国の2倍だ。これは単純化すると電力の独占体制に由来する。これを是正したら料金はもっと安くなる。この点を論じてこそ、公平で、中立的で、国民を融合する議論になる。ここを直していかなければ、何時までも日本の国民経済上のハンディは是正されない。この際「電力料金が上がるぞ」と国民に覚悟を求めるなら、同時に各種有力研究所は「電力の高コスト体質を変えていこう」と言う議論も始めるべきだ。国際競争力でハンディを負担している産業界はもっと声を上げるべきだ。
周知の通り、わが国の電力産業における地域的独占体制、総括原価主義、随意契約禁止がないこと、LNG調達で日本が一人負けしている状態、独立系発電業者への狭量な市場提供等々に見られるように、電力価格という日本経済の最も根幹的な部分には、21世紀的競争経済に逆行する高コストの独占的価格が居座っている。これこそ日本経済の高コスト体質の原因だ。何しろ、日本の電力は外国のガス生産者や国内の調達参加者にとっては、言い値で買ってくれる上得意だ。雑誌『選択』2011年6月号は、その悲劇的状況を論じている。こんな前時代的現実が放置されている。中国人の嘲笑を買うのも、無理はない。
原発には新規参入がない。 従来の計画では、原子力発電のシェアは現状の30%から2030年には50%にする予定だが、それが実現していたら、この独占体制の影響は圧倒的になり、わが国経済の根幹部分で価格体系を歪め、国際競争力を弱体化し、電力会社以外の全ての企業を含む国民経済に、巨大な負担を与えていたに違いない。これでは「原発を進めたい」の一心だけで、国民経済への膨大な負担には一顧だにしないという姿勢だ。(つづく)
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