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2011-04-28 00:00
(連載)原子力は「最終解決」ではなく、「つなぎ」にすぎない(3)
西村 六善
元地球環境問題担当大使
日本はどうなっているのか? 現状では日本の総発電量のうち再生可能エネルギーは僅か1%だ。水力を加算した自然エネルギーでやっと10%になる。これに原子力を加算して「ゼロ・エミション発電」という日本独自のカテゴリーを新設し、これを現状の34%から2030年に70%に引き上げることにしている(2010年6月の「エネルギー基本計画」)。この内、原子力は50%を占めることになっているので、自然エネルギーだけなら、2030年にやっと20%になるという「穏健な」目標だ。原子力は「急速に」伸ばすが、自然エネルギーは「程々に」という姿勢がはっきりしている。中央が日本のエネルギーを差配しようとするDNAが依然底辺で効いている。
これだけ出遅れているから、日本が欧米に伍して急速に再生可能エネルギーを大量導入することは難しいだろう。その上、他国の顕著な実例を引用すると「国情が違うから」と反論が来る。たとえば、ドイツは、原子力忌避、エネルギー安保、国際競争力強化を国策とし、そのうえで再生可能エネルギーの推進に取り組んでいる。最も先進的な固定価格買取り制度から始まり、炭素市場の開設、大規模なグリーン投資、カネのかからない多様な誘導法制の実施に至るまで、あらゆる努力をしている。ドイツは「日本より国土が広い」とか「大西洋に面する風況が良い」などと反論するのは、視野狭窄の議論だ。エネルギー安保と温暖化防止を促すグリーン投資はコストではない。それどころか それは「成長と雇用を生む自己利益」である。それに基づく政治意志と賢明な政策手段や透明な国民議論があるかどうかが問題なのである。然り。その意味では、たしかに「国情は明らかに違う」かもしれない。
しかし、我が国にも希望の萌芽はある。大規模な洋上風力発電は原発に代置できる発電能力がある。日本発の先端技術も存在する。太陽光発電は、中国メーカーの巨大投資などを背景に、コストが大幅に低下している。日本の休耕田を太陽光パネルで敷き詰める構想もある。昨年6月に閣議決定した「新成長戦略」は、並々ならぬ用語を使って再生可能エネルギーの急速拡大を謳っている。たった1年前に唱えたお経に魂を入れる時だ。「再生可能エネルギーの急速導入なんぞは出来る筈がない」と冷笑する時でなく、昨年6月に唱えた熱意を思い出し、断固行動する時だ。
東日本大震災と原発事故は日本の外交にも大きな示唆を与えている。それは日本がエネルギーの外国依存を脱却する可能性を開くものだからだ。近世史上初めて日本は、独自の価値観で外交を進める機会が訪れようとしている。自然エネルギーを主流として持続成長を保障して行くことは、単に地球温暖化の悲劇を回避するだけのためではない。(おわり)
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