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2006-08-24 00:00
中国の中南米への進出を注視すべきである
甲斐 紀武
(財)日本国際フォーラム 所長
昨年12月22日の「JFIRコラム」に、私は「中国の中南米に対する資源獲得外交とわが国の対応(1)(2)」というテーマの一文を寄稿したが、その後も中国の中南米への進出は続いているので、その模様を報告してみたい。
欧米の新聞論調を見ると、ここ数年の中国の中南米への積極的な経済進出には依然として衰えが見られない。具体的な数字、事実も詳細に報じられている。この欧米の関心に比べると、同じ問題に対する日本の政府、国民、マスコミの関心は余りにも低い。中国の中南米進出は、日本の中南米における利害と抵触する場面も考えられないわけではなく、我々としてもっと中国の中南米進出の現実に関心を払うことが必要であると考える。
「5年前には中南米の政治家は、誰も中国について語らなかった。しかし、今日の中南米では誰もが中国について話している」と言われている。中国の顕著な進出振りを上手く言い当てた表現である。中南米諸国は、元もと資源輸出志向の体質を持っている。他方中国は、資源獲得の必要性に直面している。両者の利害はまさに合致しているのである。2004年に中南米は1980年代後半の対外債務危機以来最も高い経済成長率を記録したが、これは対中輸出の増大に助けられたところが大きいと言われる。現に中国との往復の貿易額は、1993年の100億ドルから、2004年には500億ドルへと増加した。
個別のケースで見れば、2004年にアルゼンチンは年8パーセントの経済成長率を記録したが、中国による大豆の大量買い付けに支えられたところが大きいといわれる。この結果アルゼンチンは中国の大豆需要の3割を供給することになった。また2004年10月に中国は、米国を抜いてチリの銅鉱石の最大の輸出相手国になった。キューバはニッケル開発に、ヴェネズエラは石油、ガス開発に、それぞれ中国の投資を受け入れている。ブラジルもこの「中国ブーーム」の利益を大幅に享受している。ブラジルは鉄鋼石、大豆、ボーキサイト、木材、鉛、マンガン等を中国に輸出し、中国は今やブラジルの第二の貿易相手国であり、両国間の貿易額はここ数年で4倍になった。2004年11月のブラジル訪問の折り、胡錦濤主席は中国はこの10年間で中南米に1億ドルを投資する計画を有する旨述べている。ブラジルはまだ道路や港湾施設が十分ではないので、中国の企業群は先ずブラジルのインフラ整備に5百万ドルを投資する計画であると言われる。
政治面でも中国との絆は強化され、ブラジルやチリは中国との関係を「戦略的関係」と呼んでいる。胡錦濤主席がブラジルを訪問した折に、ルラ大統領は中国を「市場経済国」と認める旨を発表した。世界貿易機構(WTO)のルールを遵守する国として認めたわけであり、中国への最大の褒め言葉である。この見返りでもないだろうが、中国もブラジルの安保理常任理事国入りを支持している。
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