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2010-12-06 00:00
日本がTPPに参加すべき3つの理由
山澤 逸平
一橋大学名誉教授
TPP(環太平洋戦略経済パートナーシップ協定)に参加すべきか否かの議論が盛んである。2つの理由がマスメディアで流布している。いずれも耳に入りやすいが、もっぱら国内向けで、対外的な説得力に欠ける。日本がTPPに参加して、それを引っ張って行くためにも、対外説得力を持った第3の理由が必要である。
第1の理由は管首相の「第2の開国論」である。日本人・社会が成熟化して、内向きになるのを止めて、積極的に対外進出するきっかけとしてTPPに参加する。TPP参加の障害となる農業保護を変える農業改革を実施しなければならない。その通りだが、実は農業保護を続けても、老齢化と後継者難で日本農業は衰退しつつある。農業改革はTPPがなくとも、本来自発的にやらなければならないものだ。事実日本国際フォーラムは2年前にすでに国際競争力をつける農業改革をやらなければならないと麻生首相に提言したが、取り上げられなかった。農業以外でも、雇用慣習の変革等日本の制度・慣習には変えるべきものが多々あるが、それらを自発的に変える気運が弱いのは残念である。
第2の理由は「TPPに参加しないと、日本は差別され、グローバル化から置いていかれる」というもので、経団連を代表とするビジネス界が声高に叫んでいる。経産省の試算も「参加しないコスト」を挙げている。これは、FTAのドミノ議論ないしは競争的自由化論であって、「周りがやるから自分も」と急かされていることになる。さらには参加すれば、未参加国を差別して得られる貿易転換効果を、メリットとする。これはベストの政策論とは言えない。
少子高齢化が進み、成長の活力が減退した日本では、日本企業は国内市場のみでは生きて行けない。海外、特に成長著しい近隣アジア市場に進出して行かざるをえない。そこでも自由で、安定したビジネスが行えるように、シームレスなビジネス環境を整えなければならない。それは日本企業だけでなく、アジア企業にも必要であり、それを近隣諸国に呼びかけて来た。これは東アジア共同体の理念として2006年の通商白書にも掲げられていた。TPPへの参加はそれに繋がるものでなければならず、これこそ第3の理由である。現在のTPP論で流布している、中国やASEANの主要国が参加しないFTAであっては意味がない。TPPは太平洋を橋渡しするが、アジアを分断するものであってはならない。
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