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2010-08-04 00:00
(連載)わが国の対露外交に欠けているものは何か(3)
木村 汎
北海道大学名誉教授
以上米国の例を長々と紹介した理由は、わが国日本がロシアにたいして採るべき態度および言動にかんして、オバマ政権の是々非々主義が大いに参考となると考えるからである。具体的にいうと、わが国は、北方領土問題以外のイシューについても、日本の立場や主張を堂々と主張すべき必要があることである。
北方領土紛争を解決しての日ロ平和条約の締結は、たしかに、わが国の対ロ外交イシュー(問題点)としては第1位の優先権を持つ。平和条約という国家間の基本的枠組を設定することなしには、他のすべての案件も、遅かれ早かれ限界にぶち当たること必定だからである。しかし、だからといって、領土問題だけが日本の対ロ外交のすべてなのではない。一例をあげるにとどめるが、ロシアは、ジャーナリスト、人権団体、分離独立を希求するチェチェン共和国内の運動抑圧など、G8加盟の政治先進国としての地位にふさわしくないことをおこなっている。
欧米諸国の首脳たちは、これらロシアの望ましくない諸側面を堂々と批判し、たとえば訪ロ期間中にも、タンデム政権から距離をおいたり、独立志向をしめしたりしているロシアの言論機関やNGOとの間の会合を積極的にもつよう努力している。ところが、他方、日本の首脳や政府は、このようなロシアのネガティブな諸傾向にたいして意図的に目を閉じ、どちらかというと沈黙を守ろうとしがちである。ロシアの欠陥を指摘すると、ロシアへの内政干渉となる、なかんずく日本の対ロ領土交渉にマイナス効果を及ぼすかもしれない――このことを危惧するあまり、領土以外の諸問題にかんしては可能なかぎり無関心の態度を保とうとしているかのように見受けられる。しかし、そのような臆病な抑制は、必ずしも適切な態度でなく、逆効果すらもたらすであろう。
欧米諸国同様に、現ロシアの行動様式のなかで善いものは思い切って賞賛し、悪しきことは忌憚なく批判する。そのような是々非々主義の態度こそが、実はロシア人の尊敬を克ち得て、ひいては領土問題の解決についてもプラス効果をもたらすにちがいない。(おわり)
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