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2010-05-28 00:00
(連載)「日米円卓会議」に参加した所感(1)
河村 洋
親米NGOニュー・グローバル・アメリカ代表
5月24日に東京で日本国際フォーラムと全米外交政策委員会の共催により開催された「日米安保条約改定50周年記念日米円卓会議」を傍聴したが、日米同盟をめぐる日米両国の意識の違いや中国の脅威について最先端の議論がくり広げられ、非常に有意義であった。しかし、日米同盟の継続のために日米双方から参加した専門家達が交わした議論の内容は、あまりに日米二国間と東アジア地域の問題に偏りがちであったように思う。世界の基本構図である「民主国家対専制国家」という視点から日米同盟が議論されていれば、「日米円卓会議」はもっと充実したものになったと思われる。
私は、日米同盟を新世紀の世界構図に合わせて深化・発展させるためには、それを日米欧同盟にまで拡大すべきだと考えている。折しもNATOのグローバル化が叫ばれ始めた今世紀に、安倍政権と麻生政権は日本とNATOの協調関係推進に積極的であった。麻生太郎氏は外相の頃からブリュッセルのNATO本部を訪れ、首相としても「自由と繁栄の弧」構想を主張したほどである。それに対し、鳩山由紀夫首相は、世界の中での日本の立場の認識がきわめて近視眼的で、東アジア志向である。「日米中正三角形」論などは、そうした未熟さを明らかにしている。
「民主国家対専制国家」の基本構図が世界の政策形成者の間で議題に上るようになったのは、カーネギー国際平和財団のロバート・ケーガン上級研究員とファイナンシャル・タイムズのギデオン・ラッチマン主任外交論説員の討論があってからのことである。それ以来私は、ロシアと中国に代表される「自由でない資本主義」が西側の「自由な資本主義」につきつける挑戦に注目するようになった。冷戦で倒された怪物が姿を変えて甦ったのである。米欧日は、冷戦後の白昼夢から目覚め、主要先進民主主義国による「三極同盟」を再強化し、今世紀の世界規模の課題に対処してゆくべきである。
資本主義の衝突は、特に目新しい問題ではない。冷戦終結からほどなくして、フランスの実業家ミシェル・アルベール氏は自らの著書“Capitalisme contre Capitalisme”のなかで「ライン資本主義とアングロ・サクソン資本主義の競合」を主張した。しかし、これは「政府と産業界の関係」に関する問題提起にすぎない。他方、ロシアと中国の「自由でない資本主義」と米欧の「自由な資本主義」の対立は、経済にとどまらず、政治と安全保障にも関連した対立である。ケーガン氏とラッチマン氏は、ロシアと中国で再び台頭してきた権威主義を、西側の民主主義に異議を唱え、第三世界で圧制体制の仲間を支援して、西側に対する地政学的な勢力争いで勝利を収めようとするものだと言っている。
ケーガン氏とラッチマン氏は、外交・安全保障や歴史の専門家として「自由な資本主義」と「自由でない資本主義」の対立を論じているが、ユーラシア・グループという政治リスク・コンサルティング会社のイアン・ブレマー会長は、自らの著書 “The End Of The Free Market”で経済人の立場から、この問題を論じている。ブレマー氏は「今はもはやグローバルな自由市場経済の時代ではない。現在の世界には二つの資本主義がある。一つは先進諸国を中心とした自由市場資本主義の体制であり、もう一つは中国、ロシア、ペルシア湾岸諸国に見られるような国家資本主義の体制である。二つの資本主義はお互いに相容れない」と述べている。中国では、欧米の多国籍企業が現地の国策企業を相手に不公正な競争を強いられている。長期的には国家管理資本主義は官僚的な非効率に陥るであろうが、今後5年から10年の間は自由市場資本主義諸国が国家管理資本主義諸国から厳しい挑戦を突きつけられることになる。(つづく)
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