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2009-12-24 00:00
岡本“アドバイザー”は寺島“ミスリーダー”を制御できるか
杉浦正章
政治評論家
為す術を知らぬ外務、防衛両省幹部にとって、元首相補佐官・岡本行夫は“希望の星”だろう。新たな“アドバイザー”として、首相・鳩山由紀夫の外交・安保路線を自由に操ってきた日本総合研究所会長・寺島実郎の長年にわたる“すり込み教育”を除去できるかどうかが焦点だからだ。岡本は、極めて常識的な外交・安保理念を持つ元外交官。寺島は、反米・親中路線を憶面もなく唱える評論家。両者の考えは天地の開きがあるが、現在米国の不信感が頂点にまで達したことからみても、寺島は“君側のミスリーダー”ということになる。問題は、鳩山が進言を受けて、消化する能力があるかどうかだ。3歩歩いて過去の発言を忘れる鳩山が、アドバイザー2人の意見を交互に発言すれば、日本の外交は大混乱に陥る。
国務長官・クリントンが駐米大使・藤崎一郎をなぜ呼びつけたかだが、紛れもなく鳩山の「クリントン長官は、普天間延期を『よく分かった』と応じた」とする発言の訂正を求めたに違いない。会談内容は極秘だが、米国務次官補・クローリーが「2014年の現行計画の実施期限に与える影響を懸念している」「大使が、日本の方針決定には時間がかかると説明した」とコメントしている断片から分析してみても、クリントンは藤崎に約束どおりの早期普天間移転を求めたに違いない。「私は理解など示していない」と語気を強めたのだろう。鳩山の英語の演説を聞けば、その英語力が分かるが、クリントンはたぶん
“I see. Ok. I understand you. ”程度の受け答えではないか。それなら外交儀礼的に相槌を打った程度と受け止めるべきだ。とても「外交的に理解する」と発言したとは言えない。故宮沢喜一以外の首相は、通訳なしに会談をしてはならないのだ。
このように日米関係は「鳩山発の亀裂」が深刻になってきたが、ここまで鳩山をミスリードしてきたのは間違いなく寺島だ。「常時駐留なき安保」「反米・親中」「東アジア共同体」「対等な日米関係」などの鳩山発言の骨格は、すべて寺島が主張してきたものだ。現在も陰に陽に接触が進んでいる。毎日新聞によると、寺島はかねてから親しい内閣官房専門調査員・須川清司を通じて、連日のようにファクスを届けている。官邸では「寺島メモ」と呼んでおり、毎日によると「外務省や防衛省は“寺島=須川ライン”が首相の外交判断に大きな影響を及ぼしていると見ている」という。鳩山のぶれの原因もそこにあるのだろう。ふがいないのは外交・防衛両省幹部だ。信念を鳩山にぶつけられない。一評論家に国家の外交・安保路線をろう断されて、なすすべを知らない。せいぜい藤崎がクリントンからの呼び出しを事前にメディアに漏らして、“活用”するのが、“抵抗”の限界だ。政治主導であろうが、なかろうが、「間違っているものは間違っている」と、首相に面と向かって発言する気骨のある外交官はいないのか。昔はいくらでもいた。
こうした中で、鳩山は最近岡本を官邸に招いて会談している。11日は20分、21日は1時間の会談だ。産経によると「首相周辺には首相補佐官にするアイデアもあった」という。手遅れ気味だが、鳩山も寺島路線の“危険性”に気づき始めたのではないか。しかし、まだ外交ブレーンをシフトしたと言うより、加えた段階だろう。岡本は、寺島とは全く逆の外交・安保概念をもっている。おそらく鳩山に普天間問題は日米合意しかあり得ないことを説いたであろう。また岡本の過去の発言などから首相への提言を推測すれば、(1)政府は大車輪で外交・安保上の現実政策の勉強を始めてほしい、(2)米中と等距離を保ちたいのなら独力防衛、つまり武装中立しかない、(3)このためには自衛隊の規模は少なくとも数倍にし、核武装もしなければならないが、周辺諸国に与える影響が甚大な上に、財政的に耐えられない、(4)したがって、「駐留なき安保」はありえない、(5)日米地位協定の改定論があるが、日米協定はドイツなどと比べても特に「不平等」なわけではない、(6)「東アジア共同体」構想は30年、40年の長期構想にとどめるべきだ、などを説明して、方向転換を勧めているのであろう。
岡本は、まさに日本の外交・安保路線をあるべき姿に戻す役割を果たそうとしているに違いない。しかし、問題は二つある。一つは野党時代から鳩山は「寺島理論」を根拠に歴代自民党政権の外交・安保政策を批判してきており、いわば“すり込み教育済み”なのである。この転換ができるかどうか。また100日間の政権運営で露呈した、決断力、統率力という首相としての素質に決定的に欠ける鳩山に、アドバイザーの使い分けができるかという点だ。社民党という反米社会主義政党の亡霊も残っている。いくら良い進言をしても、本人が理解できなければ、猫に小判でしかない。「寺島メモ」に対抗して「岡本メール」を送り、それを記者会見で読ませるくらいでないと発言を誤る。
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