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2009-09-01 00:00
ミャンマーをめぐる情勢変化と日本の役割
小笠原 高雪
山梨学院大学教授
このたびの総選挙の結果、自民党の下野は確実となった。民主党には未知への期待とともに不安もつきまとうし、不安は対外政策においてとくに大きい。しかし政権の交代は新たな課題に取り組む好機でもある。新内閣には、歴代内閣が積み上げてきた遺産を継承しつつ、その基礎のうえに新たな課題に取り組むことを期待したい。過去数年間の日本は国内問題に忙殺され、そのことは経済力の低下と相まって国際社会における日本の存在感を低下させてきた。この状況の打開は新内閣の急務であろう。そして、その際注意するべきことの一つは、取り組むべき課題の選択にあたり、国内的な喝采のみを基準にしないことである。たとえ国内的な関心は高くなくても、日本の役割が期待される諸問題は、いくつも存在しているからである。
そのような諸問題の一例として、ここではミャンマーの問題を挙げてみたい。過去20年間、欧米諸国はミャンマーに対する制裁を続けてきたが、それが軍政に民主化勢力への譲歩を強いることに成功するに至っていないことは明白である。軍政は中国への依存を深めることをつうじて専制を維持し、民主化勢力を権力から排除し続けたからである。しかし中国の「成功」も限定的なものにすぎない。軍政は民主化勢力のみならず、少数民族諸集団とも敵対している。専制の綻びが広がったとき、その悪影響は中国の内部にも及ぶであろう。中国は少数民族諸集団の一部に援助を与えてきたし、近年では民主化勢力の扱いをめぐって軍政に自重を促すようにもなっている。こうしたことは、ミャンマーの現状と将来に対する不安を、中国もまた共有していることを示唆している。
そうした問題を承知のうえで重荷を中国に負わせ続けることも、一つの戦略として考えられないわけではない。しかしミャンマーの不安定化のコストは広範にわたるものであり、とりわけタイに及ぼす悪影響が懸念される。そのような観点からみるならば、オバマ政権発足以来、米国が軍政との対話を模索しはじめたことは、直接のきっかけが何であれ、歓迎すべき変化といえる。以上は国際社会におけるコンセンサスづくりに有利な条件である。コンセンサスのポイントには、国際秩序との適合性への配慮、長期的視野からの内発的変化の重視、民主化・繁栄・安定の好ましい相互作用の促進、などが含まれよう。このうち民主化に関しては、軍政と民主化勢力とのあいだの対話と互譲が必要であるが、目に見える進展には双方における世代交代がおそらくは不可欠であろう。
こうしたコンセンサスづくりにおいて、日本は重要な役割を果たしうる。日本は特定の勢力に深入りしすぎていないし、地域的な「野心」を疑われる立場にもない。国連、ASEAN、インドなどと連携してゆくことも十分に考えられる。具体的には、少数民族をも視野に入れた人道援助、留学生の積極招致を含む人材育成、大メコン圏やASEANへの統合を重視した復興支援、などの施策を段階的に進めてゆくべきであろう。
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