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2009-01-30 00:00
英語の日米首脳電話会談の危うさ
杉浦正章
政治評論家
確かに今のところ米大統領オバマの外交優先順位で、日本は15番目位に位置するのだろう。各国首脳との電話会談の順番で分かる。これを日本外交の面目丸つぶれととるのは浅薄だが、G8で最後に残ったのは日本とイタリアだけとなれば、いささか不満は残るだろう。外交当局のホワイトハウスまたはオバマ側近への食い込みのたりなさを言われても仕方がない。あきらかにオバマは外交の優先順位に基づいて電話をかけている。最初が中東諸国であることが、それを物語っている。米国のジャーナリズムの関心もそこにある。日本がアジアで最初の国といっても、同盟関係を考慮すれば、いくら何でも中国に先にかけるわけにはいくまい。その程度の配慮はあったのだろう。
しかし、今日ここで問題として指摘したいのは、英語を使っての電話会談の危険性である。微妙な表現によって、外交上の誤解を与えかねない要素がある。首相・麻生太郎が英会話が出来ることは分かっているが、首相としては日本語を使って堂々と話せばよい。会談内容から分析すれば、麻生はおそらく外務省の書き上げた英文を読み上げただけだろう。10分間で発表されたように、祝意の伝達、金融・世界経済情勢、テロとの戦い、中東情勢、気候変動、アフリカ開発、拉致問題、日米同盟の一層の強化、早期の首脳会談を“会話”するのは不可能に近い。それとも事前の文書確認だけで、実際には話し合われていない可能性も否定できない。
日本の首相の英語力は、通訳並みの宮沢喜一を除けば、会話の出来るのは、麻生、中曽根康弘、小泉純一郎だが、レベルは似たり寄ったりだ。若干麻生がリードしているのは、とっさにジョークが言えたことだ。国連の演説で同時通訳の機器が故障した際に\"It\'s not a Japanese machine, I think, no?\"(日本製じゃないね)と瞬時に言えるのはめずらしい。ただ\"I think, no\"はいただけない。\"It\'s not a Japanese machine, is it ?\"程度でよい。いずれにせよ雑談程度ならともかく、国家間の機微に渡る外交課題を、この程度の英語力で大統領と直接話すべきではない。電話会談の危険を感じたのは、日本が北朝鮮問題で置いてけぼりを食らった北へのテロ指定解除の際の、大統領ブッシュとのやりとりだ。麻生が10月11日浜松市で青年会議所(JC)の会頭経験者らと懇談中、しかも重要なことに外務省の秘書官がついていないときに、ブッシュから電話がかかってきた。
後から考えると、CIAの情報で秘書官がついていないのを見届けて、かけてきたのではないかと思いたくなるようなタイミングの良さだ。さすがにこの時は現場に通訳もいなかったため、会談は電話回線で同時通訳がいる場所を経由して行われたという。しかし麻生は会談でテロ指定解除を明確に拒否せず、ブッシュは条件付き容認と受け取ったと言われている。そしてわずか30分後に発表だ。日本語での会談でもこういう事態が起きるのだ。かって有能な外交官で駐米大使だった安川壮から「英語でしゃべると、君は気後れしないかね。私はするよ」と正直な発言を聞いたことがある。駐米大使のベテラン外交官ですら気後れするのだ。ましてや首相たる者、海千山千の外国の政治家を相手に英語で“交渉”をやってはいけない。あくまでジョーク、雑談の範囲にとどめておくべきだ。今時英語がしゃべれるくらいのことは、自慢にならない。
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