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2026-01-19 00:00
(連載2)実際の国防能力こそ、国防費のGDP比率よりも重要である
河村 英太崚
外交評論家
他方でイギリスの野心的な計画は必ずしも称賛に値するものではない。バロンズ氏は、ドイツが通常兵器軍を急速に構築しているため英当局に対してこの計画に迅速に予算を配分して実施するよう強く求めている。さらにイギリスの革新的な構想とドイツの効率的な官僚機構を組み合わせることで、ヨーロッパの防衛能力を強化することを提言している。そして、この遅延の原因がホワイトホールの官僚主義的な縦割り主義にあると批判している。従来型の計画の方が将来志向の計画よりも迅速に開始できることは否定できない。しかし、戦略的合理性と効率性だけが国防費の使途を決定する理由ではない。各国の政治文化も影響する。ドイツの国防の主眼は、ロシアのウクライナ侵攻を踏まえた緊急の領土防衛である。この目的のため、メルツ政権は将来志向の軍改革よりも、当面の軍備増強を優先した。さらに、ナチスとシュタージによる権威主義的監視という歴史的経験から、倫理的なハードルがドイツを軍事目的でのAI利用に慎重にさせている。ドイツ軍は人間による技術制御を優先し、完全運用可能なLAWS(自律型致死兵器システム)を禁止しているものの、人間が監視するAIシステムは認めている。
このような立場の違いはGCAPにも見られる。イギリスは戦闘力増強と損傷リスク軽減のため、ACP(自律型協調プラットフォーム)すなわち「忠実な僚機」(loyal wingman)ドローンとネットワーク化された多目的戦闘任務向け司令センター型に傾倒していたのに対し、日本は老朽化したF-2を直ちに代替するため、F-35よりも高度なセンサーとネットワーク技術を備えた有人型を希望している。一方でイタリアは、F-35の極めて高いコストと技術移転に対する厳しい制約に不満を抱いている。GCAPパートナーは共通の有人機を製造し、その後に各空軍の要件に合わせて調整することで、これらの研究開発目標のギャップを埋めることで合意した。
しかし、ウクライナでの戦争は軍事戦術を劇的に変えてしまったため、上記のようなイギリスと日本の間の立場の違いは予想よりも早く縮小する可能性がある。高市早苗首相は1月5日の伊勢神宮への初詣後、自身の内閣では岸田政権の国家安全保障文書を見直してドローンとAIネットワークシステムに重点を置くことを訴えた。また、防衛産業の強化は今世紀における日本経済の新たな牽引力となると述べた。これらの点は、イギリスのSDR2025で述べられていることと概ね一致している。これにより、GCAPにおける日本の立場はイギリスとより一致する可能性もある。ドイツとは異なり、日本はAI兵器に関する倫理的なハードルが低い。
ドンロー・ドクトリンを掲げるアメリカがより自国第一になる時代において、国防費増額の支出目標はかつてないほど重要になっている。バロンズ元陸軍大将はイギリスとドイツの防衛計画を比較し、重要な問題を提起している。ミニラテラルまたは多国間の政策協調においては、戦略的合理性とパートナーの政治文化を考慮する必要がある。英独そして日英の優先順位の違いは、無数の事例の氷山の一角に過ぎない。国防強化というと火力の規模や兵器の選択が話題になりがちだが、AIネットワークシステムとそれに伴う問題も軽視すべきではない。AIネットワークシステムの重要性はますます高まっている。増額された国防予算をどのように使うべきか?各国は改めて考えるべきである。(おわり)
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