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2025-07-04 00:00
ポーランド大統領選とその余波
舛添 要一
国際政治学者
6月1日、ポーランドでは大統領選挙の決選投票が行われた。親EUの中道派「市民プラットフォーム(PO)」ガ推すワルシャワ市長のラファウ・チャスコフスキ(53歳)と右派の「法と正義(PiS)」が支援するカロル・ナブロツキ(42歳)が対決したが、僅差で後者が当選した。この結果は、ポーランドのみならず、ヨーロッパ全体に大きな意味を持つ。大統領選の第一回投票は5月18日に行われた。結果は、1位がチャスコフスキで投票率は31.36%、2位がナブロツキで29.54%、3位が極右政党「自由と独立連盟(同盟)」のスワボミル・メンツェンで14.81%、4位が極右政党「ポーランド王冠同盟」のグジェゴシュ・ブラウンで6.34%であった。投票率は67.31%で、第一回投票としては過去最高であった。
決選投票では、ナブロツキが50.89%、チャスコフスキが49.11%であった。ポーランドでは、2015年の総選挙でPiSが勝ち、2期8年にわたって政権を担ってきた。PiSは、司法への介入、メディアの統制強化、人工妊娠中絶反対、LGBTの排除、移民の排斥、歴史的事実の否定(ユダヤ人迫害など)、反EUなどの政策を展開した。ウクライナ戦争についても、ポーランドでは「支援疲れ」のムードが広がっており、支援に批判的な右派の勢力拡大の背景になっている。EUやウクライナよりも、「ポーランドが第一」だという声である。2023年10月の総選挙では、PiSは第一党の座は確保したものの、野党が過半数を握り、EUの大統領も務めたトゥスク前大統領を首相に選び、政権交代が実現した。しかし、大統領はPiSのドゥダであり、法案に対して拒否権を発動できるため、その権限を行使してきた。大統領と首相の「ねじれ」が、円滑な政治運営の障害となってきたのである。それだけに、今回の大統領選挙で、その「ねじれ」が解消できるかどうかが注目された。
しかしながら、「ねじれ」は継続することになった。ナブロツキは、トランプと関係が深く、5月にはホワイトハウスを訪ねている。トランプ流の自国第一主義を掲げ、移民排斥を主張する。また、気候変動対策にも反対である。 ブロツキの勝利は、ヨーロッパにおいて、ウクライナ支援に批判的な勢力をさらに増大させることにつながる可能性がある。ヨーロッパでは、EUの政策に異を唱え、移民排斥を訴える勢力が力を増している。同時に、彼らは、ウクライナ支援にも批判的である。ドイツでは、「AfD(ドイツのための選択肢)」がそうで、今年2月に行われた総選挙では、保守野党のキリスト教民主・社会同盟(CDU/CSU)に次ぐ2番目に多い票を得た。フランスでは、極右の「国民連合(RN)」が勢力を拡大している。昨年の総選挙では、予想に反して、第一党になれず、左翼連合、マクロンの与党連合の後塵を拝して3位に沈んだが、2027年の次期大統領選では、RNの候補が当選する可能性がある。
東欧でも、スロバキアでは、2023年10月の総選挙で、ウクライナ支援の停止・ロシアへの制裁停止を訴えた左派の野党「スメル(道標)」が第一党になり、党首のフィツォ元首相が返り咲いた。一方、5月18日に決選投票が行われたルーマニア大統領選挙は、親EUのダン候補(ブカレスト市長)が、親ロシアの候補に競り勝った。これからも、ヨーロッパでは、ウクライナ支援に消極的な勢力が拡大することが予想される。難航しているウクライナ停戦交渉に、それがどのような影響を与えるのか注視していきたい。
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