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2022-08-19 00:00
ウクライナ戦争、今秋以降の停戦交渉がヤマ場
飯島 一孝
ジャーナリスト
ロシアが2月下旬にウクライナに侵攻してから間もなく半年になる。ロシアは当初、短期決着を目指したが、ウクライナの思わぬ抵抗で戦線が拡大してきている。双方とも激戦が続き、体力が消耗しているとの見方が強い。そこで、これまでの経過を振り返りながら、今後の展開を探ってみた。
今回の戦闘開始のきっかけになったのは、2021年7月12日、ロシア大統領府のホームページに掲載されたプーチン大統領の「ロシア人とウクライナ人の歴史的一体性について」と題する論文だった。この中でプーチン氏は、ロシア人、ウクライナ人、ベラルーシ人の三つの民族は基本的に同一のルーツから発生した。だから同じ民族なんだ」と主張した。ロシアでは帝政時代からある議論で、ロシアは「大ロシア人」、ウクライナは「小ロシア人」、ベラルーシは「白ロシア人」と呼ばれていた。
最初に軍事的な動きが出てきたのは、昨年9月10日のロシアとベラルーシの軍事演習だった。これは毎年行われているものだが、この時はベラルーシとウクライナの国境付近で行われた。その後、米紙が「ロシアはウクライナへの侵攻を計画している」とスッパ抜き、ロシアと欧米諸国との間で、一気に緊張が高まった。プーチン氏は今年2月21日、国家安全保障会議を開催し、軍隊派遣を命じた。そして3日後、プーチン氏はウクライナ東部での演説で「特別軍事作戦」を開始したと発表したのだ。侵攻の当初、戦闘は1週間で終わると見られていた。ロシアとウクライナとでは軍人の数だけでも4倍以上の差があり、さらに兵器の面でも圧倒的な差があったからだ。これに対し、ウクライナのゼレンスキー大統領は徹底抗戦を呼びかけ、市民もこれを受けて結束して戦った。その後、ウクライナ軍は米国・NATO軍が提供した最新兵器で武装し、かなり訓練していたことが分かった。このため、早い段階にウクライナの大統領を拘束し、傀儡政権を立てるというロシア側の試みは失敗に終わった。さらに、ロシアにとって誤算だったのは、米やNATOは軍事介入しないといいながら、ウクライナに巨額の軍事支援を行い、携帯用対戦車ミサイルや対戦車砲などの最新兵器を提供していたのだ。こうした事態にプーチン大統領は軍に対し、抑止力を「特別警戒体制」に引き上げるよう命令した。事実上、核兵器をいつでも発射できる状態に置くという命令だった。これで一気に核兵器使用の危険性が高まった。
これから秋、冬が近づくと状況はさらに変わってくる。ドイツなど欧州諸国は現在、石油や天然ガスの脱ロシア化を急ピッチで進めており、ロシアに対する空前の経済制裁の効果が出てくることは間違いない。一方、米国は11月に中間選挙を控えており、バイデン大統領ら幹部はウクライナ問題に専念できない状況になってくる。このため、ロシアと米国・西欧諸国との間で近い将来、停戦を含めた和平交渉を行わざるを得ないだろう。いずれにしろ、これから冬までの数ヶ月間に、双方とも停戦交渉のテーブルに付くかどうかのヤマ場を迎えることになるだろう。
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