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2021-10-06 00:00
(連載1)カーボンニュートラルと原発問題―COP26を前にして
袴田 茂樹
日本国際フォーラム評議員/青学・新潟県立大学名誉教授
近年、「カーボンニュートラル(脱炭素)」(再生可能エネルギー)はファッションあるいは流行語になった感がある。脱コロナでは、全世界が現実に切迫した状況に置かれているが、脱炭素は全世界で急激に流行った「新興宗教」と言っても良いのではないか。再生可能エネルギー・ブームもそれと結びついている。ただわが国では、再エネとか脱炭素という時、メディアの一般論調や世論、国民心理からみて、原子力発電はほぼ除かれるか特別に規制されているので、この点でフランス、ロシア、中国、インド、米国、その他の国とは決定的に異なった状況に置かれている。また、欧州と異なり電力やガスなどの国境を越えた輸送網が日本には存在しないので、脱炭素達成後に再エネで危機が生じると、国家全体の沈没となる。
私がファッションとか宗教というのは、地球温暖化とCO2排出の関係とか生態系への影響について科学者の間でも必ずしも一致した見解が存在しないからだ。その関係を否定する専門家も少なくない。一例を挙げると、しばしば北極海の氷の溶解でシロクマが餌の捕獲ができなくなり、2100年までに絶滅するとして絶滅危惧種に指定され、痩せ細った白熊の映像がセンセーショナルにメディアで取り上げられる。しかしシロクマは近年相当増加しているとして英国のS・クロックフォード博士が具体的な資料を提示している。彼は捜査動物学で35年の経験を有する専門家で、シロクマの環境変化への優れた適応性も指摘し、世界の専門家たちはこのような研究結果に注目しているが、宗教が科学を無視するのは通例のことだ。
現在の温室効果ガス削減目標制定の背景となるのは2015年のパリ協定であるが、国の指導者レベルでも企業人も、「地球温暖化が今日人類の直面している最も深刻な問題の一つであって、その原因はCO2 排出である」という考えが一般化している以上、簡単には反対できない。脱炭素に関して相当前向きの政策や対策を打ち出さないと、国際的にも国内的にも孤立するし、企業によっては存立さえ危ぶまれる事態になるからだ。
国の指導者は2050年までに温室効果ガスを全体としてゼロにするとして、そのために2030年までに達成すべき目標を掲げる。つまり、現実から出発し、どれだけの努力をすれば何年先に何が可能かではなく、先ず2050年の高い目標が掲げられ、そこから逆算して、2030年の目標を決めているのだ。菅首相も、2030年の温室効果ガス削減(脱炭素)目標を、2013年比で26%と言っていたのを、今年4月に米国が主催した気候サミットで、いきなり46%に引き上げ、さらに50%に向けて挑戦を続ける決意を表明した。これらの目標数字を掲げるにあたって、首相が専門家や企業人としっかり検討したとは聞かない。(つづく)
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