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2021-04-15 00:00
(連載2)プーチン体制は崩壊するか――「ロシア社会の3階層」の視点から
袴田 茂樹
日本国際フォーラム評議員/青学・新潟県立大学名誉教授
2、若年層――閉塞状況に強い不満
青少年層や、30歳台の働き盛りの層は、ソ連時代末期や90年代の困難な時代は、直接的には全く知らないか子供時代であった。彼らにとって2000年代初期の経済復活は、わが国の1960~80年代の経済発展と同じく、「当たり前のこと」として自然現象のように映っていた。したがって、この若い層にとって、プーチン大統領のイメージは、リーマンショック(2008)後のロシア経済の停滞、「クリミア併合」後の欧米の対露制裁、油価の下落、近年のロシア経済の困難、腐敗汚職の蔓延などと結びついている。しかも、この世代にとっては、物心ついて以来ロシアの指導者は一貫してプーチンであり、プーチンの長期政権へのウンザリ感や反発は中高年層よりも強い。また若年層はテレビより政権による統制の少ないインターネット情報に頼っている。2011年末から12年にかけての反プーチンデモ・集会に参加した者の多くが若年層だった。
ただ、「ナーシ(我々)」と称する親プーチンの青年愛国組織もある。2005年に創立され一時人気が下がったが、その後のプーチンによる愛国心向上策と「クリミア併合」により近年また盛り返した。しかし、メンバーの多くは権力との結びつきによる立身出世を意識している者で、青少年層全体の中では少数派だ。
昨年8月の体制批判派ナワリヌイ暗殺未遂事件に、政権当局が関係したのはほぼ間違いない。同氏はドイツでの治療後今年1月17日に帰国し逮捕されて有罪判決を受けた。この「ナワリヌイ事件」に最も強く反応したのは、青少年層あるいは若年層であった。この事件の後、大統領への批判が強まった。2011年、12年に続いて、コロナ禍を理由に集会などが禁止されていたにも拘らず、若い世代を中心に新たな反プーチンデモ・集会が全国規模で開かれた。今はプーチンや政権側はこれに神経を尖らせている。若い世代が社会に対して抱く最も大きな不満は、有力な縁故か賄賂を使わないとまともな就職もできない腐敗社会で、能力があり専門を身につけた意欲的な若者(クリエイティブな階級と呼ばれる)の大部分はこの社会の閉塞感を強く感じて、国外移住を望んでいる。
3、クレプトクラシー(収奪政治)――ポストは利権
プーチンは元KGB(秘密警察)員であり、プーチン時代には彼と結びつきの強いシロビキと言われる治安機関や軍関係者、そしてプーチンと個人的関係が強い人たちが支配権や特権を貪っていると言われた。それも事実だがロシアにおいては、公務員であれ企業従業員であれ、働いている人々のポストの多くは利権と密接に結びついている。特に上級の国家官僚や企業のポストには特別の利権が付随する。これはプーチン時代だけの現象ではなく、遡ればソ連時代、帝政ロシア時代からのロシア的伝統でもある。ソ連時代には「ノメンクラトゥーラ」(支配階級、エリート層)という言葉も使われたが、ソ連崩壊後もその実態はほとんど変わっていない。多くの者が地位を利用して特権を貪り、国民や国家の金を奪って私利私欲に走るプーチン時代の政治はまさにクレプトクラシーである。(つづく)
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