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2021-01-14 00:00
(連載1)旧ソ連内における露の地政学的後退
袴田 茂樹
日本国際フォーラム評議員/青学・新潟県立大学名誉教授
最近、旧ソ連地域内において、ロシアの地政学的立場が後退している。それに関連した新しい動きとして次の3点挙げておきたい。①「中央アジア+ロシア」が意味するもの。②ナゴルノカラバフ(以下ナゴルノ)問題、③モルドバにおけるドドン親露派大統領の敗北。ただ、これまでも、ロシアが旧ソ連地域を自らの勢力圏としてしっかり支配していたとは言えない。最初にそのことを想起し、次いで上記3点について説明したい。
プーチン大統領は、ソ連邦崩壊を「地政学的な最大の悲劇」と言い、ロシア主導による独立国家共同体(CIS)の再統合を目指した。しかしバルト3国はソ連邦崩壊以前から結託して反露姿勢を保持し、CISへも加盟せずNATO、EUに加盟した。現在はバルト3国の他、ウクライナ、ジョージア、トルクメニスタンがCISに加盟していない。プーチンのCISに関する当初の見解は、共通の軍隊(ロシア軍主導)と共通通貨(ルーブル)を持つ連邦で、明らかに脱共産主義の「ソ連体制」再構築を念頭に置いていた。そこで、プーチンは2011年10月に「ユーラシア同盟」構想を表明した。しかし、ロシアの政治支配を望まない旧ソ連諸国は賛同しなかった。そこで、経済的には旧ソ連諸国は簡単には切れない関係にあるので、「ユーラシア経済同盟(連合)」を2015年1月に発足させた。この組織も、旧ソ連15カ国の内、正式の加盟国は現在、ロシア、ベラルーシ、カザフスタン、アルメニア、キルギスだけである。ロシアは経済を梃に勢力圏の統合を目指したが、油価下落や経済制裁でロシアの経済力が大幅に落ち、経済同盟の魅力も大幅に低下しているからである。
まず①に関してだが、「中央アジア5カ国+ロシア」の枠組みが新たに形成されて、昨年10月15日にこの枠組みで初めて5カ国とロシアの外相会談が行われたことの意味を伝えたい。わが国ではこの問題が無視されているからである。「中央アジア+1」の枠組みを最初に創設したのは日本だが、その後欧州や米国などが追随した。中央アジアとの関係が最も深いロシアが最初にこの枠組みを創設しても不思議ではない。しかし今日までロシアはそれを拒否してきた。その理由は、中央アジア諸国は水問題や国境問題などで内部対立が激しいが、ロシアは「分割し統治する」の立場から、むしろ地域の内部対立を利用した「2国間関係」を重視したからだ。ロシアはイスラム教のアジア系である中央アジア諸国がロシアに対して、共通のアイデンティティを確立することを警戒してきた。タタルスタンや北コーカサスなどロシアにも強い影響力を及ぼし、トルコなどの影響力が強まるからだ。その背後には、バルト三国が一体となって、独自のアイデンティティを確立し、ロシアに対抗してきた苦い思いがある。
今回ロシアが、「5+1」の枠組みを初めて認めたのは、カリモフに代わってウズベキスタンのミルジヨエフ大統領が中央アジアの協調外交を始め、カザフスタンとウズベキスタンの主導権争いや、ウズベキスタンとタジキスタンの水を巡る険悪な対立などが後退し、「分割統治」が困難になったからだ。2国間の枠組みでも、キリギスでの政治紛争を抑えられず、中央アジア全体に対する中国の影響力は、ますます強まっている。中国に対抗するためにも、ロシアは中央アジアに対し、新たなアプローチが必要になったのである。(つづく)
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