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2020-10-20 00:00
(連載1)菅首相の対露政策への提言――継承ではなく独自性を
袴田 茂樹
日本国際フォーラム評議員/青学・新潟県立大学名誉教授
先の論説において安倍総理の外交政策を総括した。今回は、基本的に安倍政策を引き継ぐとしている菅義偉新首相の対露政策について考えたい。私は、安倍外交全般は高く評価し敬意を抱いている。また、対露政策に関し、他のどの首相よりも熱意を示したことも高く評価してきた。しかし、プーチン大統領との信頼関係を深め、双方の任期中に北方領土問題を解決して露と平和条約を締結するとの課題は、解決しなかっただけでなく、私の見解では大幅に後退した。つまりプーチン氏は、以前よりはるかに強硬姿勢になった。この問題の未解決に関し安倍氏は「痛恨の極み」と述べたが、こうなった理由は一切述べなかった。その理由を明らかにしないと、菅首相が安倍路線を漫然と引き継ぐことは、二の舞になり、危険でさえもある。本稿では、安倍首相の対露政策の問題点を想起し、菅新首相が配慮すべきことを指摘しておきたい。
以下は、これまで私が安倍政権の対露政策の問題点を述べた要点である。①ロシア指導部の厳しいシニカルとも言えるリアリスト的発想法やメンタリティを殆ど理解していなかった。つまり、こちらが好意を示せば、相手も好意で応えるとの「性善説」的幻想を抱いていた。その意味で、安倍政権の対露外交は極めてナイーブであった。②プーチン氏は外部世界を敵視し、日本を米国に服従していると見て、独立国とみなしていない。③プーチン氏は、国際法とか条約などは潜り抜けるのが、また利用できる時には徹底的に利用するのが、政治の智恵と心得ている。例えば国連にしても、クリミア併合反対の総会決議は歯牙にもかけなかったが、安保理常任理事国としての拒否権は徹底的に利用する。また、北方領土交渉においても、国連憲章の「敵国条項」と言われる、国連総会で廃止案が通った(95年)第107条(敗戦国は戦勝国の決定を拒否できない)を、必ず持ち出す。
菅首相が安倍氏の間違いを繰り返さないよう、安倍・プーチン間には真の信頼関係も認識の共有もなかったこと、その結果日本側が一方的に希望的幻想のみで突っ走ったことを、以下、具体例を示してハッキリさせておきたい。それを「継続」して欲しくないからだ。
2016年9月4日に、ウラジオストクの東方経済フォーラムで、安倍氏はプーチン氏にファーストネームで親しく、「ウラジミル、われわれの手で平和条約締結の歴史的決定をしようではないか! その責任を我々が共に担おう!」と熱弁をふるった。その翌日プーチンは中国の杭州での記者会見で、安倍氏に対して侮辱的とも言える次のような発言をしているが、ロシア人記者相手の記者会見だったので、管見の限り日本では報じられていない。「彼は際立った見事な演説家だ。しかしウラジオストクでの会談における彼の価値はそこにあるのではない。彼の価値は、彼が8項目の協力案(その年5月にソチで安倍氏が提案した経済などの協力案)とその実現について、述べたことにある。」安倍氏が熱弁をふるった領土問題解決と平和条約締結は、冷ややかに無視し、ロシアに実のある経済協力のみを評価したのである。ある意味で、プーチン氏は率直だ。(つづく)
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