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2009-01-07 08:05

給付金否定で足並みを揃えた新聞各社社説

杉浦 正章  政治評論家
 焦点の定額給付金の是非について、メディアをリードする新聞各社の社説が1月7日までに出そろった。読売を除いた各社は、真っ向から2次補正からの切り離しを要求するものから、効果を疑問視するものまで主張はさまざまだが、総じてネガティブだ。しかし論拠は、世論調査の結果から導いており、民主党の主張と同様に、「虚構」のそしりを免れぬ部分が多い。机上の空論型で、庶民の生活実感を無視している。徹夜で考えたか、6日の民主党幹事長・鳩山由紀夫の「究極の大愚策」という代表質問と、首相麻生太郎の「国民は給付を待っている」との答弁は、まさに給付金での激突コースを暗示している。

 こうした状況を受けた各社の社説は、毎日が真っ向から「定額給付金は切り離せ」との見出しで「ここは首相と与党が譲り、給付金分離に応じるべきだ」と主張している。朝日も「首相は野党の提案に歩み寄り、定額給付金を削除すべきだ。君子は豹変(ひょうへん)す、と言うではないか」と削除論。日経は「定額給付金の見直しも含め、修正協議に柔軟に臨む必要がある」、東京も「政府・与党が譲って、給付金部分を除く2次補正を与野党が協力して早期成立させるべきではないか」と論じている。産経も「与党内にも(首相の)説明に納得する声は決して多くはない」とネガティブだ。毎日と日経は事態打開のため話し合い解散を主張しており、朝日は既に同様の主張をしているから、3紙が話し合い解散で一致した。
一方読売は「定額給付金の景気刺激効果が限定的なのは否めない」としながらも、民主など野党3党が衆院に提出した予算修正案について「結局、渡辺喜美・元行政改革相ら、定額給付金に批判的な自民党議員に採決時の“造反”を促し、与党を揺さぶる政局的思惑によるものと見られても仕方がない」と、政局がらみの動きと看破している。

 読売を除く社説が生硬なのは、まず論拠を世論調査に置いていることだろう。朝日は自社の調査では63%が「必要な政策と思わない」と答え、NHKの調査では81%もの人が「景気回復に効果はない」と答えていると主張している。しかしこれは、拙稿が何度も指摘したように、調査のからくりの所為だ。政策を問えば、一億総インテリ時代であり、コメンテーターらから聞きかじった「景気に効果はない」といった主張を思い出して、否定的になる。しかし「生活に必要か」という聞き方をすれば「必要」が9割を超えるだろう。毎日は貧乏だが、朝日は高給取りばかりの新聞貴族だ。貴族が、空論を展開する根拠に、調査を使っているのが本質だ。民放関係者から聞いたが、コメンテーターに給付金を否定させると、抗議の電話が殺到するという。新聞も給付金否定の社説を書くたびに部数は減るのではないか。給付金否定の社説の特徴は「政策論」からの否定であり、「実態論」を無視している。そこに“虚構”があるのだ。

 しかし民主党と渡辺喜美は、マスコミで動く。各社社説を奇貨として、民主党は「給付金切り離し」を、かさにかかって要求するだろう。麻生が譲れば、朝日の主張する君主豹変などという甘い判断ではすまされない。内閣総辞職か解散となる。まさに食うか食われるかの場面だ。政府・与党が強行突破しようとすれば、マスコミは挙げて解散か退陣を要求するだろう。そこで「話し合い解散」の芽が出てくる。もっとも秋にはその可能性があったが、いまはないだろう。なぜなら総選挙は政権が移行するかどうかの戦いになっている。妥協につながる話し合い解散を麻生が拒否するゆえんだ。

 
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