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2008-12-17 07:58

麻生と“一蓮托生”の態勢を固めた自民党

杉浦 正章  政治評論家
「総選挙で散るにしても、麻生首相の下で散る」との発言は、首相・麻生太郎が感涙にむせんでもおかしくない。支持率急落で「政権末期・年内退陣」との誤判断も生じた麻生政権が、通常国会に向けて態勢を持ち直したようである。自民党内の大勢が麻生支持で固まった。一般国民は、これだけ人気急落にもかかわらず、麻生になぜ党内基盤があるのか疑問に思うだろうが、基本には一部マスコミの意図的なミスリードがある。これに踊らされた民主党と、「麻生はまだ使える」と判断する自民党内との基本的認識・判断の相違が根底にある。

 冒頭の発言は、九州・沖縄選出の若手議員が「麻生太郎首相を支える会」を結成したあと、農水政務官・江藤拓が述べたもの。「負けて政権を失うかも知れないが、ほかの旗の下で戦うつもりはない」とも付け加えた。九州人らしいいさぎ良さだが、自民党内は麻生支持の動きが急だ。最大の動きは15日夜の党内7派閥の会長らの会合。「苦しい時ほど、みんなで支える」と確認した。幹事長・細田博之も党内固めに懸命だ。首相経験者と会談して協力を取り付けている。地方レベルでも麻生支持が広がっており、自民党熊本県連は15日、党内の一部議員の麻生批判の動きに関して、「勝手な言動は看過できない。繰り返されるならば、厳しい対応を要請する」との抗議文を細田博之幹事長に郵送した。

こうした動きの背景について、自民党幹部は「基本は朝日新聞とこれに乗る小沢一郎との戦いだ」と漏らした。確かに最近の朝日は、あらゆる政治記事を「反麻生」に結びつけ、民放番組などをリードしている。批判は報じても、当解説のように「党内基盤が固まってきた」などと言う報道は、あえてしない。12日には紙面のトップで、消費増税を明記しない自民党の動きを「首相指示、与党従わず」と、まるで与党にに造反が起きたかのような報道をする。民放テレビのコメンテーターまでが各紙との論調の差に違和感を指摘したほどだ。17日の社説では、自民党が「パフォーマンスだ」と激怒している野党3党の雇用対策法案を、「この国会で成立させよ」との社論を展開している。中立の綱領を掲げながら、編集の基本は民主党政権の樹立にあるとしか思えない。

 自民党内はこうしたマスコミの編集を「意図的である」(幹部)と見る空気が圧倒的だ。さらにいえば、首相の適性を朝日のいうように“誤読”や“失言”のレベルで判断する政治家は少ない。毎年繰り返される予算ぶんどり合戦で自民党が気勢を上げたのを、朝日のように「与党従わず」とは判断しないのである。現に各派は圧倒的に麻生支持に動いており、「与党は従っている」のである。麻生が税財政抜本改革に関する「中期プログラム」の原案に消費税引き上げの時期を明記したのは、指導力の発揮そのものではないか。

 加えて、自民党には、自分たちの選出した首相をたとえ不人気でも2カ月で変えるほど、矜持のないことはしたくないというムードがある。また変えようにもカードを使い切った形になっているのである。政界再編の中川秀直と決定的な対立が生じている元首相・森喜朗が、参院の青木幹雄とともに麻生を全力で支えているのも大きな力となっている。麻生が第2、第3の発言上の失敗や「政治のぶれ」をしない限り、支持は継続するだろう。政権が倒れるかどうかは、森と青木の発言が変わるかどうかを見ていれば分かる。いずれにせよ自民党は、当面麻生と“一蓮托生”の態勢を固めた。
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